さらなるビジネス成長を求め中国に渡ったリクルートは、日本で培ったノウハウを武器にした戦略で消費者や顧客の心をつかむ。
これは世界で勝つ 強い日本企業のつくり方の特集記事です。
近年、大いに盛り上がりを見せる中国の結婚マーケット。その火付け役の1つが、リクルートが2004年から刊行している結婚情報誌「ゼクシィ」中国版である。現地法人でトップを務めるリクルート 執行役員 中国推進ユニットの森英文氏に中国ビジネスの戦略を聞いた。
――リクルートが中国へ進出することになった背景をお聞かせください。
森 2004年に中国・上海へ進出し、結婚情報誌「ゼクシィ」の中国版(大衆皆喜)を立ち上げました。もともとゼクシィは首都圏、東海、関西などの大都市圏を中心に発行しておりましたが、今後の事業としての成長を考えると、どこかのタイミングで海外ビジネスに挑戦しなければなりませんでした。ここ十数年で、インターネットメディアやフリーペーパーが発展し、小さな投資でもビジネスができる環境が整ったことも後押しになりました。
大衆皆喜は、「New-Ring」という社内の新規事業提案制度の中から生まれたものです。中国の結婚マーケットの広がりを考え、海外事業化案件の第一陣に選ばれました。そこから2年間、苦労しながらも少しずつ土台を作り、現在はグルメ情報誌「ホットペッパー」などほかの事業も中国でビジネスを開始しています。
上海は中国で最も発展している都市ですし、距離的にも日本から近いので、わたしたちが初めてグローバルビジネスをする上では非常に条件の良い場所でした。ただし、外資系企業ということで、さまざまな規制の中でビジネスをしなければならない難しさもありました。
――今、中国の結婚マーケットはどのような状況でしょうか。
森 中国では家の中で結婚式を挙げるのが通例で、昔はドレスなどは着ませんでした。しかし、今ではホテルでの結婚式やレストランウエディングが増えているほか、日本や韓国、台湾のスタイルも吸収し、結婚式のあり方はどんどん変化しています。上海では年間で約15万人が結婚していると言われ、市場は大きいです。ただし、日本のように、1日3組の結婚式を次々に回していくといったビジネスモデルは定着していません。
競合するサービスはたくさんあります。日本では「結婚=ゼクシィ」という図式になりつつありますが、中国での認知度はまだまだ低いです。雑誌、インターネットメディア、イベントの運営などを組み合わせて、何とか消費者の期待に応えるよう努力しています。
――具体的に、どのような差別化戦略をとっているのでしょうか。
森 広告出稿主などの顧客に対しては、市場を細かく分析し、利益創出を念頭に置いた商品設計を進めています。効果測定をすることに注力しながら、広告主の利益に着目することで勝ちパターンが見えてくると考えています。
消費者に対しては、情報の信頼性や比較検討のしやすさなど、日本で培ったノウハウで満足度を上げていきます。イメージ広告を集めた女性誌は中国にもたくさんありますが、情報をきちんと整理して読者が見比べられるという視点に立ったメディアは、わたしたちのほかにはありません。
進出当初はこの部分での強みが最も大きかったのですが、中国ビジネスの成長は早く、競合も常に進化しています。最終的にリクルートが競争力のあるメディアになるためには、信頼性の高い情報を提供するメディアであるという土台をしっかり築かなければなりません。
中国の競合企業は、競争力や技術力の進歩も早く、学習意欲も高いです。同じ商品だけを提供していると、すぐに追いつけない状態になってしまいます。特にわたしたちは形のないものをサービスとして提供しているので、その影響は顕著です。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授