ところで、読者の皆さんは「TIA」という言葉をご存じだろうか? 「ティー・アイ・エー」と発音し、「This Is Africa」の略語である。アフリカでのビジネスや旅行などで、おおよそ先進国では起こり得ないようなトラブルに巻き込まれたとき、「TIAだからしょうがないよね…」というようにネガティブな意味として、欧米人やわれわれのような非アフリカ人の間で使われている。
このアフリカの旅の道中でもトラブルに何度も直面し、そのたびにTIAという言葉を使ってきた。上述したように基本的には否定的な意味で使うわけだが、一度だけポジティブに活用されている場面に遭遇した。それは南アフリカのケープタウンにて、ワールドカップ本大会の組み合わせ抽選会の様子を生中継する野外イベントでのことだった。
イベント会場には地元の人たちだけでなく、アフリカ各国からも多くの観光客が集まっており、アフリカ初のワールドカップ開催に向けてヒートアップしていた。そこで、会場のステージに上っていたバンドのボーカル兼MCが叫んだ。
「T・I・A! This Is Africa!」
それに呼応するように、観衆のアフリカ人たちも一斉に叫んだ。その叫び声には「これがアフリカだ!」「ワールドカップ史上初のアフリカ開催だ!」という誇りや自信が満ちあふれていた。
「俺たちにもできる!」――。われわれがコートジボアールで感じた 「自信のないアフリカ人」は、もうそこにはいなかった。今回のワールドカップ招致は、南アフリカだけではなく、アフリカ大陸全体に影響を与えている。大会が無事に成功を収めれば、確実にアフリカの人たちの自信を深めることになるだろう。経済においては急成長著しいBRICsに遅れを取っているアフリカ諸国だが、彼らに自信がつけばポテンシャルはサッカー同様に高いはずなので、将来の成長が十分に見込めるだろう。ぜひワールドカップ後のアフリカにも注目したいところだ。
そんな中、アフリカ各国における日本のプレゼンス(存在感)はどうか。またも中国の後塵を拝してしまうのか。アフリカに限った話ではないが、日本が行っている各種支援において、日本が現地の人々にアピールしているケースは少ない。それに対して、中国や韓国はその手の「宣伝活動」をうまくやっていると感じる。このポテンシャルの高いアフリカの地において、もっと日本の存在感を出すべきではないかと思う。
さまざまな思いをめぐらせながら、アフリカの地を発ち、次の目的地であるオセアニア大陸へ向かった。
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アシシ(左)とヨモケン
アシシ:1977年生まれ、北海道出身。大学卒業後、外資系コンサルティングファームに入社。6年勤めた後、ドイツワールドカップ現地観戦を理由に退職。その後、中田英寿の影響を受け旅人デビュー。半年仕事、半年旅人のライフスタイルも2009年で4年目に突入。自遊人布教活動を推し進める血気盛んな31歳。twitterアカウントは「atsushi_libero」。
ヨモケン:1979年生まれ、神奈川県出身。1998年、大学入学直後に日本代表とともに初めてワールドカップ(フランス大会)を体験。2002年、日韓ワールドカップをEnjoyし尽くして、同年、外資系コンサルティングファームに入社。2006年のドイツワールドカップを現地観戦後、同社の中国オフィスへ転籍。人生のマイルストーンをワールドカップイヤーに重ねながら、現在はフリーランスのコンサルタント兼旅人を満喫中。twitterアカウントは「yomoken2002」。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授