ガーナやコートジボアールなどアフリカ諸国に訪れて驚いたのは、現地の人々の日常生活に中国文化が深く入り込んでいることだ。
昨年7月にスタートした、サッカーワールドカップ(W杯)出場32カ国を周る「世界一蹴の旅」も、スケジュール上では約半分が消化し、訪問した国数も23カ国(1月28日時点)を数えることになった。アジアから始まり、欧州を経由してアフリカ大陸に到着したのは11月上旬。そこから約1カ月半にわたり、ワールドカップに出場するアフリカ諸国を巡ってきた。
南アフリカは、昨年のコンフェデレーションズカップの際に訪れていたが、ガーナ、コートジボアール、カメルーンといった西部および中央アフリカの国々は初めて踏み入れた土地だった。
その中で最初に訪れたガーナで驚いたのは、国内での「中国」の存在感だ。遠く離れたアフリカの地でも、街中では中国語(漢字)の広告や看板をしばしば目にする。日用品なども中国製品があふれているし、現地で暮らす中国人の数も多い。
ガーナの隣国であるコートジボアールに向かう長距離バスの中では、中国人女性と同席になった。20代前半に見える彼女は、ミシェルというフレンチネームを持ち、コートジボアールの公用語であるフランス語を巧みに操る。数年前に結婚した中国人のご主人と一緒に中国製の女性用カツラの輸入販売業を営んでいるそうだ。補足すると、アフリカ人女性はファッションとしてカツラを身に付けるのが一般的で、大きなマーケットが存在するのだ。そこでも中国製は健在なのである。
コートジボアールに到着した日、宿泊するホテルの確保に困っていたわれわれを見かねて、ミシェルが「よく中国人ビジネスマンが来た時に使っている宿があるから紹介してあげるわ」と救いの手を差し伸べてくれた。連れて行かれたのは、外観からはとうていホテルには見えない建物だった。四方は壁で囲まれており、正面の門には漢字で建物の名前が記されていた。「中国貿易促進センター」。中国語の表札を日本語に訳すとこんな具合だろう。
門をくぐると、敷地内には治外法権が適用されてもおかしくない中国ワールドが広がっていた。人々、家具、食べ物などすべてが中国化されており、現地人のメイドさんまでカタコトの中国語を話すのには驚いた。ここでは、インターネットなどの通信手段をはじめ、中国人の現地コーディネーターも常駐しており、ビジネスでコートジボアールを訪れる中国人をサポートする環境が整っていた。宿泊施設もそのサービスの一環のようである。それほどまでにニーズがあるのだろう。
コートジボアールに滞在中、現地の生活にとけ込んでいる日本人留学生と出会い、興味深い話を聞いた。ちまたには中国製品があふれているが、現地の人からのイメージは決して良くないという。現地の人は「安かろう、悪かろう」という典型的な悪印象を持っているだけでなく、「品質が良くて高価な日本製や欧米製は金持ちの国へ流れてしまう。どうせわたしたちは貧しくて、アフリカにはこういう品々しかないのだ」というひがみのような感情も抱いているそうだ。
すべてがそうではないが、こうした「被害妄想」や「自信のなさ」というのは、日常生活やワーキングスタイルにも影響しているようで、現地の人たちと接してもあきらめ感が伝わってくる。
「アフリカではどの国もこうなのか?」と思っていたが、ワールドカップ本大会で日本の初戦の相手に決まったカメルーンを訪れたときに、現地の人から違う視点のコメントをもらった。
「確かに、安かろう、悪かろうかもしれないが、安価で手に入りやすい商品は人気があるのも事実だ。何と言ってもクリスマスシーズンに子どもにプレゼントを買ってあげられるのは中国製のおかげだから」
これもまた現実である。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授