中国消費者の日本に対する意識、そして日本企業のライバルとして台頭してきている中国企業の状況について、現地での調査結果を基に明らかにしていく。
前回はネクストリッチ層の消費動向について沿岸部と内陸部での比較を交えながら紹介した。今回は、日本企業がこの市場でどう戦うべきか、その検討の参考になる消費者の対日観やライバルとして台頭してきている中国企業の様子について述べたい。
まずは、ネクストリッチ層が国内メーカー製と海外メーカー製のどちらを好むかという調査結果を紹介したい。図表1のように品目によって差があり、例えば、食料品や衣料品は国内メーカー製への選好度が高いが、逆に、自動車>化粧品>情報機器>家電製品はこの順で海外メーカー製の選好度が高いという結果が出ている。また、海外製品好きの比率は内陸部よりも沿岸部の方が高くなっている。
次に、ネクストリッチ層の日本あるいは日本メーカー製品への選好度を見たい。図表2は日本に対する一般的な印象を尋ねたものであるが、日本が好きだという回答は沿岸部では35.8%、内陸部では30.7%で沿岸部の方が高く、特に、上海市や広東省では好きだという比率が4割近くとなっている。
今回のインターネットアンケートを共同実施したサーチナによれば、ネクストリッチ層に限定せずに同じパネルを使用した調査(2009年2月実施、9300サンプル)では、日本への差別(敵視)感情について、「ない」、「あまりない」という回答は17%で、図表2の結果とはかなりかけ離れた結果になっている。今回のインターネットアンケートの調査パネルに(過度に日本びいきの回答者が集まっているという)偏向があったわけではなく、一般の消費者に比べてネクストリッチ層は対日好感度が高いという仮説が成り立つ。
一方、サーチナによる年収25万元(約325万円)以上の富裕層へのグループインタビュー調査では、日本製品が好き、日本人の礼儀正しさが好き、日本の食べ物や街が好きなど、全般的に「好き」という回答が多い。
このようにみると、中国人の対日感情については、収入が高く、教養レベルが高いネクストリッチ層ほど日本を見る目が公正(冷静)となっているのではないか。歴史問題であれば、ほぼすべての中国人が日本に対して嫌悪感を持つことは事実であるが、今の日本あるいは今の日本人に対しては、ネクストリッチ層は意外にも好感を持っている。ネクストリッチ層の価値観は急速に多様化しており、「中国人は嫌日」という思い込みは禁物である。
中国の生活者全般を対象としたような調査はまったく意味をなさない。所得や職業、地域などによって消費の価値観やブランド選好の考え方は大きく異なっていることに注意したい。ネクストリッチ層は日本製品には高い好感を持っていると考え、日本企業もこのユーザーセグメント向けのマーケティングにおいては日本の持つ良さを前面に押し出すべきだろう。
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明治学院大学 経済学部准教授