【第21話】部長の決断内山悟志の「IT人材育成物語」(1/2 ページ)

これまでの検討の成果を部長たちに発表する日がきた。川口の指導により、4人が役割を分担し、プレゼンテーションを行った。熱のこもった質疑応答の末、情報システム部長の秦野は、即決である決断を下すのだった。

» 2010年05月24日 12時02分 公開
[内山悟志,ITmedia]

 いつも検討会を行っている会議室ではなく、今日は広めのプレゼンテーションルームが会場となっていた。4人の上司である情報システム部長の秦野と経営企画部の吉田のほかに、もう1人、人事部長の渡辺が顔をそろえていた。人事部長として会社全体の人材育成に悩みを持つ渡辺は、以前からこの勉強会の評判を聞いており、オブザーバーとして参加を申し出たのだった。

いざ本番

 前回、プレゼンテーションの進め方やテクニックについて川口から説明を受け、役割分担した上でリハーサルを行った4人であったが、いざ本番となるとさすがに緊張の様子がうかがえた。プレゼンテーションの持ち時間は、1人10分の計40分で、その後質疑応答を受ける形態で行うことになっている。

 トップバッターとして壇上に上がったのは経営企画部の阿部だった。阿部は、今日のプレゼンテーションのテーマと全体の構成、これまでの検討の経緯と活用した手法について説明する導入部の担当である。前回の川口の説明の中で、プレゼンテーションでは導入部が非常に重要であり、ここで論点や前提を明確に示して、聞く人の関心を引き付けなくてはならないことが指摘されていた。阿部は、何枚かのスライドを使って、検討の範囲やテーマ設定における言葉の定義なども明確に示していった。「まずまずの滑り出しだ」と川口も少し安堵した。

 2番手に登場したのは情報システム部の宮下だ。宮下の役どころは、課題の提起だ。イシュー・ツリーとKJ法を組み合わせて作成した課題の構造図を示しながら、「なぜITが事業に貢献できていないのか」について、主要な課題を示した。時折メモを取りながら真剣に耳を傾ける部長たちの表情に、宮下は次第に緊張がほぐれてきたようで、身振りもつけたテンポ良いプレゼンテーションを繰り広げた。時間の配分も適切だ。

 次は、仮説としての解決策の案を提示する担当である浅賀に順番が回ってきた。浅賀は、洗い出した施策案を絞り込む過程で、ITを最大限に活用する企業風土を築くことが根源的な課題であることに気づき、再度施策案を練り直す作業を行ったという経緯に触れながら、最終的に導き出した施策案を紹介した。

 さて、最後に控えていたのは奥山だ。これまでの3人のプレゼンテーションのポイントを再度整理したうえで、結論として導き出した施策が有効であると考える論拠を明快に説明していった。そして、資料の最後のページを示しながら、普段から歯切れのよい語り口で「これをわたしたちの導き出した結論として提言します。」ときっぱりと言い切ってプレゼンテーションを締めくくった。部長たちからは、一斉に拍手が湧きあがった。

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