「なぜシステムは当初承認した予算内で収まらないのだろうか」という思いをお持ちの経営層の方は多いのではないかと思います。
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2008年以降、多くの企業は新規システム投資を凍結・抑制してきました。ただ、わたしたちのクライアントにおいても、徐々にですがそれが復活しつつあると感じています。新規システムの構築では、それが大規模システムであればあるほど、当初の予算どおり進まないことが多いものです。
ITが経営の重要な要素になって10年以上がたち、新規システムの投資やシステムの維持管理のコストを経営層が討議することも多くなってきました。そのため、「なぜ(システムだけは)当初承認した予算内で収まらないのだろうか?」という思いをお持ちの経営層の方は多いのではないかと思います。
今回はシステム構築の予算超過と、そのリスク低減の簡単な手法について考えてみます。
はじめにシステム構築のコストについて簡単に解説しておきます。
システム構築のコストは、「製品・サービスの代金・利用料」と「人件費」の2つで構成されています。「製品・サービスの代金・利用料」とはハードウェアやソフトウェアの購入費・リース料やライセンス料が中心となります。「人件費」とは、設計や開発(プログラミング)やテストなどに必要なエンジニアの費用で、これは構築全体の作業に必要となるエンジニアの工数と単価を乗じたものの総合計となります。
システムの構築方法では、最近話題になっているクラウド型のシステム構築も急増しています。ただし、コスト構造で考えた場合、両者に違いはありません。クラウドを利用する場合にはハードウェアの購入費・リース料やライセンス料は必要ないとされますが、それらのコストを加味した「クラウド利用料」を支払っているというだけのことです。
さて、予算超過の原因について考えます。
最も多い理由は「システムで充足すべき要件、つまり設計・開発すべきシステム機能が当初より増加したため」というものでしょう。システムの設計が進むにつれて、だんだんとシステムの完成形が見えてくるわけですが、それに従って「別の機能も必要」「この機能は思っていたものと違う」という声が顧客のユーザー側から出てくるのはよくあることです。
これらは、いたしかたないこと、避けられないことと思われる経営層もいらっしゃるかもしれませんが、それは誤った認識です。責任の所在は明確に存在します。
構築を担当するシステムベンダーに大きな責任があるのです。
最大の責任は「(システムベンダーに)必要なスキルが欠如している」ということです。
発注者の要望や想いを適切に理解できないこと、ユーザーに対してプロジェクト開始前に「未来のシステムの姿」をきちんと伝え切れないこと、つまり営業担当者やエンジニアにコミュニケーションのスキルが欠如しているということです。
さらに「これらのスキル不足を補う手段を会社として担保せずに、営業・提案活動を行わせ、プロジェクトを開始させてしまった」という面も存在します。システムベンダーにマネジメントのスキルが、企業として欠如しているということも指摘できます。
充分なスキルを整備していないことは、それだけでプロフェッショナル・サービス業としては致命的に不誠実なことです。猛省すべきしょう。
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明治学院大学 経済学部准教授