食べているものが体にどのような影響を与えるか考えてみる。古い食習慣を見直し、新しい食習慣を始めてみてはいかがだろうか。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
マスメディアから流される情報はどうも信用ならん、とお嘆きの諸兄諸姉。誠に同感であります。分けても「食」という分野において、その感を強くしていらっしゃる方が多いと察しますが、それは正しいことであります。
発展途上にあります栄養学は、諸説紛々、入り乱れ、何が真実なのか専門家にも判定できないところがあります。ある説が唱えられていたとしても、まったく真逆のことも、同時にまことしやかにささやかれていたりします。だから普通の消費者は、何を判断の基準にしていいのか分かりゃしない。一部良質なものを除いた、大半の低俗なマスメディアは、情報を精査もせずただひたすら垂れ流しにしているだけなんだから、信ずるに足りないのは当たり前のことですけど。
つい先ごろまで「油は植物性のものを、それも体にいいリノール酸をたっぷり摂りましょう」と、言っていたかと思うと、ある日突然「リノール酸はアレルギーの原因物質ですから、あまり摂りすぎるのはよくありません」とくる。
そうかと思うと「動物性の脂肪は健康によくありませんから、植物性脂肪をたっぷり摂ってください。バターよりマーガリンが健康的です」と堂々と宣伝していたかと思うと、気付いてみれば「マーガリンにはトランス型脂肪酸という有害な物質が入っていますから、できるだけ摂取量を控えてください」とひっそりと注意されていたりもする。
「食事はバランスが大事です」と言っておきながら、それが何と何のバランスのことを指しているのかも明確に示すことができない。まさか、ごはんとおかずのバランスではないだろうな、肉と野菜なんていう単純なバランスのはずはないな、くらいは誰にでも分かるけど、その先の説明はまったくきいたことがない。
いちいちあげつらっていたら切りがないけれど、そんな例はそれこそ枚挙にいとまがないくらいです。
われわれ人間は自然の一部であり、食べたもので自分自身を形成しているのだから、食べるものがいかに大切かは、賢い人ならとうに知っていることではありましょうが、その人たちが疑いも無く信じている常識というものが、一読してひっくり返るような事実を列挙してあるのが本書なのであります。
例えば、食事の中で穀物と豆類が2対1でバランスされていることが基本であり、油を摂るならオメガ3とオメガ6という二つの必須脂肪酸を1対4というバランスの範囲内で摂ること、さらに動物性たんぱく質の必要量は意外と少なく全食事量の10%以下でいいことなどが、分かりやすく書かれています。概要を示しておきますと、まずわたしたちが普段食べている食材を穀物、葉野菜と果菜、根菜、豆類、動物性たんぱく質の5つ、プラスα(海藻、オイル、調味料など)に分け、食事全体を10割とした時のそれぞれの適正な割合を出してあります。
それは、穀物3、葉野菜と果菜2、根菜2、豆類1.5、動物性たんぱく質1、そして、αが0.5、という割合です。毎食この比率で食べることはなかなかむずかしいことと思いますが、例えば3日とか1週間とかの考えやすい単位でこのバランスを見直すということは、素晴らしい食習慣につながっていくことと思います。
忙しいさ中、良い仕事をするためにと思って、積極的に食べていたものが、じつは体に悪かったなんて、知らないほうがある意味幸せなのかもしれませんが、後で健康を害してから真実に気づくというのも、なんだか納得のいかない話でありますので、賢明なかたがたは、この本に書かれていることを参考にして、古い食習慣を今一度見直し、新しい食習慣に変革すべきでしょう。
『幸福論』や『眠られぬ夜のために』などの著者として有名なスイスの哲学者カール・ヒルティは、こんなことを言っています。
「われわれは消極的に悪い習慣を捨てようと努力するよりも、むしろ常に良い習慣を養うように心掛けねばならぬ」
確かに名言、というべきでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授