チーム名は“笑う正直者”――システム・コーチングの現場〜その1ベストチームとは何か(1/2 ページ)

今回からは、いよいよシステム・コーチングの現場の様子について、事例を交えながらお伝えしていく。

» 2010年09月08日 14時24分 公開
[島村剛, 森川有理(CRRジャパン),ITmedia]

 さて、前回までのところで、とある製造業A社のチームCのメンバーがそれぞれどのような気持ちを持ってこのプロジェクトに臨んでいるかを見てきた。今回からは、いよいよシステム・コーチングの現場の様子について、事例を交えながらお伝えしていく。

第1回目のセッション「コーチングへ向けての土台づくり」

 最初のセッションでシステムコーチが実現したいことは、クライアントとなるチームのメンバー間の「意図的な協働関係」づくりである。コーチングのセッションだけでなく、それ以外のかかわりも含め、チームとしてどのような雰囲気で過ごしたいのか、さらに、どのような人間関係をメンバー間で構築していきたいのかについてメンバーに問いかけ、各自の発言から合意を形成していく。

 この合意があることで、今後のあらゆる活動を通じて、チームが立ち戻る場所を明らかにし、個々人の責任感を醸成し、コーチングに向けての土台を形成していくのだ。

 さて、いよいよ1回目のセッションの当日、初回ということもあり、参加者たちの緊張の色は隠せない。場を和ませるためのウオーミングアップの後、システムコーチがチームに投げ掛けたのは「なぜ、この取り組みが大切なのか」という問いである。

リーダーDさん

「それは言うまでもありません。会社を挙げて取り組んでいる経営計画ですから、社員たるもの、その現実化に注力するのは当然でしょう」

メンバーEさん

「それはその通りですが、わたしたちにとってはそれほど単純ではないです。頭ではその重要性はわかりますが、わたしたちにはそれぞれ数字のプレッシャーもありますから、なかなか自分ごとにならないんですよね」

メンバーFさん

「まあ、重要だからこうして貴重な時間を割いてでも取り組め、ということなのでしょう。ただ、正直、また以前の全社プロジェクトみたいに、大騒ぎしても何も変わらないんじゃないかと感じています」

メンバーGさん

「わたしは、会社全体のことよりも自分の営業成績のことが気になっています。それ以上に大切なことかどうかは、まだ理解できていません」

 こうしたメンバーの発言を聞いたリーダーDさんから、もう一度、「なぜこの取り組みが大切なのか」ということについて説明がなされた。本件は新たに打ち出された全社経営方針のもと、B部長からの指示でスタートしている。そして、この取り組みは会社のためでもあると同時に、数字に追われ続ける自分たちの状況を改善するためでもある、というDさんのとらえ方も語られた。

 チームとしては、まだまだ全員が腹から納得している状況には程遠いが、まず頭では「なぜ大切なのか」が理解できた状態だ。コーチは、ここから次のステップに入っていく。

 「このチームをどんなムードにしていきたいですか?」「そのために、お互いに何を約束しますか?」。これが、次にコーチから投げ掛けられた問いである。

 これは、これからのチーム活動を行っていく上で土台となる意図的な協働関係を形成するための問い掛けである。

 さて、ここからチームCはどのような関係性をデザインしていくのだろうか。

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