今どき、海外に生活していても、インターネットさえ繋がれば、日本の状況はどこにいても時差なく知ることができる。文字情報で配信されるニュースはいうに及ばず、オンタイムで日本のテレビを見たりラジオを聞くこともできる。
この1年、厳しい経済状況を反映して、日本からあまり明るいニュースは伝わってこなかった。海外にいても、日本社会全体が元気をなくしている様子がよく分かる。おそらく、トルコであれば、同じ状況でも「なんとかなるさ」「わるい時もあれば、いい時もあるよ」「こういう時こそ、何かビジネスチャンスにつながるかもしれない」といった達観とも楽観的ともとれる反応が返ってくるだろう。
現在の景気後退は、グローバル規模での世界共通現象なのである。ヨーロッパでも、ギリシャ、アイルランド、スペインを始めとして、より深刻な状況に置かれている国々が沢山あるし、若年層の失業率も極めて高い。世界的な視野で見る限り、日本は、決して国際的なプレゼンスが低下したとは思われない。むしろ、海外からは「あの日本でも経済が悪いらしい」くらいの目で見られている。
今こそ、日本人の強みである「苦境に立たされた時の底力」の本領を発揮すべき時である。大切なのは、日本人が自分たちを信じることである。まずは正しいと思うことをやってみること、行動してみることが大切である。連載の最終回にあたり、海外在住の一日本人の立場として、日本の良いところ、強さ、そしてこれからについて考えてみたい。
話は変わるが、3週間ほど前、33年前に留学先のサンフランシスコでホームステイをしていたホストファミリーから、突然、メールが届いた。今は引退して、悠々自適な生活をしているホストファーザーが、わたしのことを思い出してくれて、インターネットを通して、わたしの連絡先を見つけ出してくれた。33年前の感受性豊かな若い頃の記憶が、懐かしくも鮮やかに蘇るとともに、インターネットの威力を改めて知らされた。
彼らは、夫妻共に日系3世であり、米国人としての社会的立場にありながら、日系人としてのアイデンティティを大切にしていた。日系人は、現地名と同時に日本名を持っていることを知っているだろうか。彼らも、彼らの子どもたちも米国名と日本名を持っていた。それだけ、日本人のルーツへの誇りと特別な思いがあるということだ。
かつて、日系移民は、米国本土やハワイ州、中南米などで想像を絶する厳しい労働環境の中で、家族や同胞と支え合いながら、自分たちの知恵と努力だけで一から資産を築き、外国の土地を取得した。さらに、子どもたちには高等教育を受けさせ、今日の現地社会における日系人の社会的地位とプレゼンスを築いた歴史と自負を持っている。しかも、日系米国人は、第二次世界大戦中には、米国籍を取得しているにも関わらず敵国人と見なされ、収容所に送られ、一から築いた資産さえも没収された。にもかかわらず、戦後、新たな自助努力により、現在の立場を回復する経験をしている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授