成功したことは皆で共有し褒めたたえるが、残すべきは繰り返さないための失敗の記録。失敗とうまく付き合い、失敗から学ぶことが、個人や組織の発展につながる。成約の報告より、不成約報告が大切である。
わたしは、「世田谷ビジネス塾」という(無料の)私塾を毎月開催している。自分の好きな本を参加者が読んできて、本を紹介し、全体で議論をする。
あの震災の翌週の土曜日も予定通り塾を行った。さすがに、参加者は普段の3分の1程度であったが、その1人が『失敗学のすすめ』(畑中洋太郎、講談社)を紹介した。
失敗とうまく付き合い、失敗から学ぶことが、個人や組織の発展につながる。反対に失敗を隠すと、成長もしないし、もっと大きな失敗につながる。失敗経験は、なかなか伝わらないし、風化してしまう。
同書は、多くの失敗実例を紹介している。その中に三陸海岸での津波のことにも触れ、先人が「これより下に家を建てるな」という石碑とその下に建てられた民家の写真が掲載されている。報道によると、今回も大被害を受けたが、その地域での犠牲者はなかったとのことだ。
その後しばらくしてある書店に立ち寄ってみたら、災害関係の本でコーナーが作ってあり、商業主義の行き過ぎではないかと多少疑問を感じたが、『三陸海岸大津波』(吉村昭、文春文庫)を購入した。
これには西暦869年の貞観地震から三陸地方を襲った津波が連綿と紹介されている。自分の不勉強の限りなのだが、その数の多さに正直驚いた。特に明治29年(1896年)と昭和8年(1933年)の大津波が詳しく描かれている。川の水が激流のように海へ走り、井戸の水位が下がるなどの地震の兆候や、地震後の軍隊の救援活動などについても詳しい。また、その後の避難訓練や防波堤の建設など対策についても触れている。
冒頭で述べるべきであったが、今回の災害を受けられた方には心からお見舞いを申し上げたい。
福島第1号原発の事故の主たる原因は、地震かそれとも津波なのか? 女川原発や福島第2号は福島第1のような惨事に至っていない。地震が与えた損害も幾分かはあるのだろうが、最大のポイントは津波によって非常電源が確保できなかったことである。
発電を生業(なりわい)とする会社自身が停電してしまうこと自体、極めて情けないというしかないが、福島第1は海抜10メートル、福島第2は40-50メートル、女川は14.8メートルに主要施設があるという。非常に分かりやすいのだが、高台なら津波はやってこない。
ある報道によれば、わが国の原発の耐震基準はしっかり決められているのに、津波に関しては過去の調査結果に加えてその上乗せ文は事業主体者にゆだねられているそうだ
実際に原発建設にあたり、貞観津波他多数の津波の歴史をしっかり検証したのであろうかという疑問が湧く。『三陸海岸大津波』の巻末にある参考文献は少なくとも福島原発建設以前からあったものだと思う。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授