いま日本企業が乗り越えるべき真の経営課題

PITでSAPの導入効果を最大限に引き出す!(1/2 ページ)

大企業を中心に導入が進められてきたERPだが、費用対効果の観点からそのメリットを実感できている企業は決して多くはない。この問題を解決するために日本IBMが提供するサービスが「Post IT Transformation(PIT)」である。

» 2011年05月16日 07時00分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]

ERPへの「期待」と「現実」の溝を埋めるために

 「ERPの導入に対する期待と現実の間には大きな溝がある。その理由は明らかだ。確かにERPの導入によって、情報をリアルタイムに把握する仕組みは整えられるだろう。だが、仕組みを活用するにあたっては、業務そのものを少なからず見直すことが欠かせない。この点への意識が欠けていたことが、不満の根底にあるのだ」

日本IBMの川島牧雄氏

 こう打ち明けるのは日本IBMのグローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループ Post IT Transformationグループでグループリーダー シニア・マネージング・コンサルタントを務める川島牧雄氏である。

 「経営情報のリアルタイム把握」、「業務効率化によるコスト削減」、「情報共有と活用」などさまざまな目的で導入が進められてきたERP。だが、川島氏によるとERPの導入コストに見合う効果を実感できている企業は日本では決して多くはないという。たとえリアルタイムに情報を把握できたとしても、意思決定が従来通り月次の経営会議で行われるならば、意思決定の迅速化は到底期待できない。また、リアルタイムにさまざまな情報を得ようとすれば、従来よりも頻度を増やしかつ多くの情報入力が現場に求められる。そのために社員は多忙になり、また、導入のメリットを享受できず、ERPが現場に根付くことは期待しにくくなる。一方で、業務改革テンプレートとしてERPに着目した場合には、業務改革そのものがERPの機能面の制約に縛られかねない。

 しかし、外部環境の変化がさらに加速する中で企業が競争に勝ち抜くためには、これらのさまざまな課題を克服し、ERPを真に活用できる環境を整えることが不可欠だ。そのために、90年代初頭からSAP導入支援にいち早く取り組んできた日本IBMが2008年から提供しているサービスが「Post IT Transformation」である。同サービスは、ERPの導入から運用までの各段階において顕在化した、あるいは顕在化するであろう問題を、解決するためのERP活用組織を企業が主体的に立ち上げることを支援している。これは、本来あるべき姿に立ち返ることを側面からサポートするものだ。

アドオンの視点からもERPを評価する

 川島氏によると、PITによるERP活用組織を立ち上げるタイミングは「導入計画立案時」、「導入作業終盤期」、「導入後1年以内の業務定着期」、「バージョンアップなどのイベント発生時」の4つに大別できるという。前2つはパッケージ機能の最大活用を見据えた現場主導の仕掛け作りが、3つ目はERPへの不満が生じ始めた原因の解明とその対応が、最後はERPに対する諦めの段階からの脱却が組織のミッションとなる。

 その基本となる取り組みは、ERPの現状を分析した上での今後のロードマップの策定と、その具現化に向けた施策の立案・遂行という2段階から成る。そして、「導入作業や意識改革とは目的が異なるERP活用専任の組織が、マネジメント層やIT部門、現場をまきこみながら主体的に改革を進め、我々は側面からサポートにあたる」(川島氏)のだ。

 この一連の取り組みで注目されるのが、現状分析において「目的達成度」や「業務活用度」に加え、「アドオン(ERP機能を拡張する作り込みプログラム)視点」からもERPの活用度を評価する点だ。

 「各企業はSAPに対してさまざまなニーズを持っていることを考慮すると、導入にあたってのアドオン開発の有用性は否定できない。だが、現状を見ると安易にアドオンの開発に走るケースがあまりにも多いのではないか。現に、我々の経験で言えば外部要因によるやむを得ないアドオン開発は全体の2割程度にすぎない。SAP自体も機能改善が進み、アドオンはさらに減らすことができる。」(川島氏)

 開発コストや保守・運用などの問題を考慮すれば、アドオンはできる限り少ないほうが望ましい。そこで、標準機能や代替ツールに置き換え可能なアドオンを洗い出し、長いものでは2〜3年をかけ計画的に移行させようというわけだ。その結果、現在、多くの企業が直面しているSAPのバージョンアップにまつわる問題の解決も期待できるようになるのである。

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