企業が倒産すると、単一的経営よりも多角的経営が非難を浴びやすい。複数の事業を行うことは、1つの事業に専念するより危険が大きいと考えられているが、適切に経営すれば素晴らしい収益を得ることができる。成功を収めている多角経営企業が取り入れている7つのステップとは。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
1、各部門に基本的なサポートを提供するための中央本部を設置する
2、指導力のあるディビジョンマネジャーを選ぶ
3、株主資本収益率などの適切な評価測定基準を使い、総合業績を評価する
4、上級管理職者にインセンティブを与える給与体系を提供し、短期的企業判断と長期的判断のバランスを取る
5、親会社のさまざまな部門の中で、企業文化を一致させる
6、株主だけでなく利害関係者全員に対し価値を創造することで競争力を維持する
7、賢い買収を行い、ビジネスチャンスをものにする
この要約書から学べること
企業が倒産すると、単一的経営よりも多角的経営の方が非難を浴びやすい傾向にあります。複数の事業を行うことは、1つの事業に専念することより危険が大きいと考えられています。しかし、単一事業は過大評価されています。適切に経営すれば、多角経営でも素晴らしい投資収益を得ることができます。
企業戦略プランナーであるグラハム・ケニーも同じ意見を持っており、本書の中で成功を収めている多角経営企業が取り入れている7つのステップを紹介しています。ケニーの多角経営を評価するための研究を基にした枠組みを求める企業経営者に、分かりやすい本書をお勧めします。
企業が多角経営をする目的の1つが、単一の事業では限界のある収入源を増やす事にあると思います。
しかしながら多くの場合、簡単に他業種に参入することはそれなりのリスクを抱えることになりますし、恐ろしいのは、新規事業に失敗してその影響を本業までが被ってしまうということもあり、否定的な考えをする人も多いと思います。実際に、単一事業に特化して専門性を高めながら事業展開をしている方が堅実的であることも事実です。
とは言え、事業を多角化することによって得られるメリットもあります。どんな商品やサービスにも寿命が存在しますので、それらの寿命が尽きる前に新しい事業を展開することによって全体の収益を守るいわば保険のような機能を果たすことも可能です。
経営の多角化のためには今までのビジネスで得てきたノウハウ以外に参入しようとするビジネスで必要な専門知識や新しいノウハウも必要になってきます。そういう意味では、新しい考え方や発想、常識を社内に取り組むことができるため、それらの相互作用で、既存の事業に対しても良い影響を与えることができるのも事実です。
本書では、そうした多角経営についてのノウハウが、成功事例と失敗事例を踏まえた上で多く記載されています。これからの新しい事業展開として他の事業に参画していこうとしている経営者の方にはぜひ読んでもらいたい1冊です。
多角経営はリスクが高いと考えている経営者が沢山います。何十年にも渡り、コアビジネスに集中する経営スタイルが流行してきました。
特に、1982年に「In Search of Excellence(邦題・「エクセレント・カンパニー」)」が出版されると、単一事業を支持する経営者が増えました。この本はトム・ピーターとロバート・ウォーターマンによって書かれた、企業が最も得意とする分野だけに集中し、他に手を出さないよう勧めるもので、影響力が強く幅広く読まれている本です。
また、投資アナリストは、企業が倒産した理由の中でも過度な単一事業よりも過度な多角経営を引き合いに出す傾向にあります。しかし、その一方で、事業を多角化することで企業に新しい活力を吹き込むことができますし、多角化を避けることで悪影響を受ける恐れがあります。経営の多角化に失敗した企業は、株主を満足させられない可能性が高いのです。
しかし、複数の事業で成功することは難しいことです。多角化のプロセスは変化と困難を伴います。多くの場合、価格の高過ぎる、あるいは計画がずさんな買収によって、多角化が間違った方向へ進んでしまいます。また、多角経営企業の多くが、1つの本部から2つ以上の異なる事業を監視するための管理面の専門知識を十分に持っていません。
通常、効果的に事業を多角化できれば、低コストあるいは高品質の製品またはサービスに繋がり、企業の財務実績が向上します。しかし、オーストラリアの高級百貨店、デービッド・ジョーンズは1990年代半ばに小売食品店の事業へと多角化しようと試みましたが、結果を出せませんでした。高価格で高品質な商品は、デービット・ジョーンズを他の小売店と区別していました。
しかし、食品取引のビジネスを本当に理解しないまま、進出しようとしたのです。デービット・ジョーンズは悪いロケーション、不適切な営業時間、魅力の無い商品の種類、そして価格設定ミスなどの数多くの失敗の後、小売食品事業から手を引きました。
「なんでもできる」は「なにもできない」とは非常に面白いことわざです。さまざまなことを同時にすることは広く浅く物事を追求しているため、専門性に欠けると言うことを皮肉っています。日本においてもある1つの専門性を追求したビジネスが長い間もてはやされてきました。
しかしながら、コアビジネスに特化してしまうと、それが、もし何らかの事件や事故で展開ができなくなってしまうと企業生命を奪うことになりかねません。しかし、必要な知識を持って取り組むことで多角化は必ず良い影響を企業にもたらすことになるのではないでしょうか。
Copyright© 2014 エグゼクティブブックサマリー All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授