プロダクトミックス、かつ地域の特性を強く意識した、市場を作るための商品開発に取り組むべき――Samsungのマーケティング戦略(1/2 ページ)

勝っている企業の戦略は誰でも気になるところ。世界市場というブルーオーシャンを駆け巡る韓国Samsungのマーケティング戦略に、日本企業は何を学ぶべきか。マーケティング企業が行った、そうした分析に注目が集まる。

» 2011年09月16日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 Samsungに、日本の電機メーカーが束になっても勝てない、そう言われるような状況が続いている。社員1人あたりの売上高や営業利益率は日本メーカーよりはるかに高く、その高い利益を製造技術とマーケティングに投資して、さらに有利な状況を作り出そうとしている。こうしたSamsungのマーケティング戦略に、日本企業はどのように対抗していけばいいのか――。

 6月16日に開催されたエグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム 第36回 インタラクティブ・ミーティング「顧客志向の新製品開発」において、株式会社コムセル 代表取締役の飯塚幹雄氏は、「市場づくりを忘れてきた日本へ:―“モノ作り”より“商品作り”で負けた日本:サムスン流マーケティングの強さ ―」と題した講演で、そのSamsungのマーケティング戦略を分析した。

ユーザーと地域の“連鎖”的グローバルマーケティング戦略

コムセル 代表取締役の飯塚幹雄氏

 コムセルはマーケティングのコンサルティングなどを手掛けている企業で、Samsungは同社の顧客の1つだ。間近でSamsungのマーケティング戦略を見てきた飯塚氏は、いくつかの例を挙げてその特徴を紹介した。

 「例えば、昨年開催された世界最大のエレクトロニクスショー『IFA2010』の会場では、日本メーカーは『3D』に特化した訴求が目立ったのに対し、Samsungは『スマートTV』を謳っていた。テレビばかり紹介するのでなく、さまざまなデジタル家電をネットワークする、新たな在り方を世界に発信した」(飯塚氏)

 Samsungのグローバルマーケティングの大きな特徴が、こうした多種多様な商品によるプロダクトミックスと、地域の特性を上手に用いた戦略だ。まず携帯電話、次にテレビ、続いてエアコン、冷蔵庫・洗濯機といった順番だという。

 「携帯電話は、その地域の市場に切り込む商材。テレビは消費者のリビングを“ショールーム化”する商材で、他の消費者にもSamsungのブランドを周知することができる。言うなれば“ユーザーの連鎖”だ。エアコンは設置のため家庭に入り込むから、消費者の住宅事情や保有商材の調査に役立つ。冷蔵庫や洗濯機の販売はライフスタイルの調査に役立つ。エアコンや冷蔵庫・洗濯機は、その地域での利益回収の役割も担っている」(飯塚氏)

 そして、欧州のような先進的な市場でブランドを確立させることは、旧ソビエト諸国や中東、北アフリカといった周辺地域への展開にも繋がっている。

 「欧州には、周辺地域から特に富裕層が頻繁に訪れる。彼らは自分の地域に戻って、欧州で有力なブランドの商品を選ぼうとする。そうして、周辺地域にもSamsungブランドが浸透していく。こちらは“地域の連鎖”といったところだろう」(飯塚氏)

 また近年では、ソーシャルメディアを活用したインフルエンサー・マーケティングにも積極的だ。ある国では、スマートフォンのマーケティングの一環として、FacabookやTwitterなどソーシャルメディアのヘビーユーザーを選び、彼らに自社のスマートフォンを与えて仲間を募らせ、それぞれのチームを競わせるといったプロモーションを行った。

 「選ばれたユーザ−たちは、ソーシャルメディアを通じて友達に声をかけ、さらにその友達へと声をかけまくって、チームの人数を増やしていった。ターゲットが絞り込まれたアプローチだ」(飯塚氏)

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