グローバリゼーションが喫緊の課題という企業が多いが、出ていく方にばかり目を奪われていないだろうか。アジアにとってまだ憧れの国だという日本に呼び込む価値を見落としていないか。グローバルな視点で日本の将来を語る。
ソニーをAV企業からAVIT企業に、ものづくりから「ものづくり+コンテンツ」の企業に、ハードウェアからソフトウェアとの融合の企業に転換を促した出井伸之氏。現在は、2006年に設立したクオンタムリープの代表取締役として、日本とアジアの「人」「技術」「資本」を掛けあわせイノベーションを引き起こすべく、新しい企業価値の創造とその支援活動に奔走しています。
このクオンタムリープが主催するカンファレンス「AIF(Asia Innovation Forum)」でも、次々と新しい提言をしています。その、出井さん自身にフォーカスを当て、日本国の将来に向けての思いを聞き出してみました。
出井さんに、日本の抱えている問題点をと問うと、日本企業はまずダイエットをとの意見でした。戦後成長期に身の丈以上に成長した大企業に減量を勧めるということです。
しかしながら、人間と同じで減量は難しいものです。そして、その方法も絶食か過度なマラソンかなど会社によって違うはずです。早期退職プログラムなどで社員に辞めてもらうよりは、思い切ってカーブアウトしよう。有益なものは独立させ、切り出す。
製造業の中にもサービス産業があります。例えば、大企業の物流部門は日立・東芝・ソニーとまとめることにより、スケールメリットが出て新しい価値が生まれるのではないか。財務部門も同じです。このように業務を外に出してしまう方法では人が育たないと批判されがちですが、それはやり方の問題。そのために実行しないのは本末転倒です。
過去に企業を成長させたコアビジネスと未来のコアビジネスは違うはず、過去のすべてを否定するのではなく、血が流れるのを防ぎながらカーブアウトをするのが現実的ではないでしょうか。
カーブアウトの次は合併です。ほとんどの業界で合併は必須です。どの会社も株主のことを考えて躊躇するのですが、株主はいやなら離れていってしまうもの。「今の株主のことばかり考えずに、未来の株主のことを考える」そうでなければ企業の未来は開けません。もちろん、今の株主も重要です。企業にはガバナンスがありますから、取締役は未来の株主のことを考える、執行役は今の株主のことを考える、という役割分担ができるといいのかもしれません。
日本経済が低成長になってからは、各企業は利益を上げることより、コストを下げることにとらわれすぎではないでしょうか? 品質で高い評価を受けていた日本製品の品質が下がっていることを指摘しています。
クルマ好きの出井さんは、ドイツの元気さが手に取るように分かるといいます。過去の混乱から抜け出しベンツ、アウディ、BMWは、いずれもガソリン車で変化を起こしています。昔は、5リットルという大きなエンジンが評価されたドイツ各社の今の売りは2リットル車です。これは、かつて日本の独占市場でした。これと比して、日本にはボトムピラミッドもトップピラミッドもないように感じます。スマートフォンも同様、GoogleもFacebookもありません。みんな、中級に寄ってきているのです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授