顧客にとっての価値を知るために、とても有用な方法があるので、伝えたい。それは、お客様、クライアントのところに行き「なぜわたくしどもと取引をしているのですか?」と聞いてみることである。
「何かリクエストはありますか?」
「何か問題はありますか?」
「何か要望がありますか?」
このように率直に聞いてみるのである。とても単純なことだが、実はやっている人は少ない。理由としては、怖いから聞けない、本音を聞くとショックを受けるかもしれない。
確かに、不満や問題があると言われるとへこむこともあるが、そこにこそ改善のヒントがあるはずである。それを聞かずしてお客様が求める価値を提供できることはない。恐れることなく聞いてみてほしい。
「御社のこのサービスはみんなとても気に入っているが、○○は修正してほしい」
「若手社員から○○の部分を改善してほしいという意見が上がっています」
厳しい言葉だがそこを改善すればいいのである。一方で思いがけないことを聞けることもある。
「この前ご紹介いただいたあの案件、本当に助かっているよ」
自分たちは満足してもらっていると思っていたものが案外、いろいろな問題を生んでいたり、逆に、それほどと思っていたことがありがたがられていたりと、新しい発見がある。このように聞くことで、「顧客にとっての価値が何なのか?」が明確になっていく。
わたし自身も定期的にお付き合いしているクライアントにこの質問をするようにしている。さまざまな指摘を受けたり、新しいビジネスのアイディアを得る機会になっている。
なお、これについてリーダーは部下にも聞いてほしい。
「私は上司としてどうか?」
「私の指導方法について何か感じることはあるか?」
受け入れがたいことがあるかもしれないが、指摘してもらうことで気付かされることがある。それを改善していけばいいのである。人はついつい自分のことを話したくなる。しかし、やはり自分が語る以上に「話を聞く」は重要である。
なお、少し話がそれるがミッションについては、組織のミッションはぜひ自分のミッションにも落とし込むようにする。
ドラッカーは自分のミッションは他の人の目標達成を手伝うことだと言った。ビジネスコーチである、私のミッションは「目標達成のための実行支援」である。これを明確にすると、それが個人のコアコンピタンスになる。そしてそれを実行するために個々人が具体的にどう行動すべきか、考えるようになる。
今回は戦略を実行する第1ステップとして「話を聞く」という点について話した。次回は戦略を実行する第2ステップとして、「成功循環モデルについて解説する。
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授