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» 2012年01月11日 08時00分 公開

企業のグローバル化について考える――その時CIOの決断とはGartner Column(2/2 ページ)

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]
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企業の方針はどうだったか

 わたしは、この相談をメールと電話で受けてから、3日後にCIOに会う約束をしました。会うまでに、わたし自身が情報を仕入れるためこの会社のWebサイトを見てはっとしました。Webサイトには自社の経営方針が打ち出されていて「グローバル化」を最優先の施策としていました。掲載された日付を見ると、既に3年ほど経過しています。

 具体的な目標として5〜7年くらいの間には、日本、米州、欧州、新興国の4つの地域で利益を4分の1ずつ創出したいとも記されていました。例によって、これも3年くらい前から掲載されています。実は、Webサイトにここまで明確に自社の方針や目標を打ち出す企業も珍しいと思いますが、ここまで公言するのだから直近2カ月間の買収劇も3年以上かけて用意周到に仕掛けていたのでしょう。

 この日本企業の経営トップは、有言実行という意味でも立派な経営者のように見えます。情報収集をした上で少し気になる点がありました。このCIOの方はわたしにM&Aが当社の戦略に沿った戦術、施策の一つですと、この3年間に話していなかったと。いえいえ、われわれに全て話す必要はないのですが、M&Aに関してITは相応の準備をすべきだと考えているので、そのアドバイスができていればと感じました。

 この日本企業に限らずですが、M&Aの事案について相手先が決まって、デューデリジェンスが始まる直前か、場合によっては、広報と同時くらいにしか情報が回って来ず、IT部門としては「そんな突然にいわれても」とか「システムを連結させることが最優先だといわれても」という状態に陥ることが多いのです。しかし、経営方針として「M&A」を打ち出すならば、ITとして準備をしなければなりませんし、IT戦略そのものを根こそぎ見直す必要も出てきます。そのために準備が必要です。

買収元企業として感情的に納得できるか

 このCIOに会って話を聞いたところ、当社は買収元であり、買収先にITと営業本部の本拠地が移ってしまうことに納得がいかないということでした。読者の皆さまが知っている通り、連邦制のIT組織を構築することも可能ですし、何も今時点で米国主導の中央集権制になると決まった訳でもありません。しかし、買収元でCIOをしていた自身がグローバルCIOになって然るべきだといっているように聞こえます。「営業本部長も同じ意見だ」とも言っていました。

 わたしからのアドバイスは、自身がグローバルCIOになりたいという気持ちは大事なことだし、そのための能力が自身に備わっているかどうかを確かめてほしいということ。そして、企業、経営トップが何を求めているかを考えた場合に、組織や役割がどうあるべきかを客観的に見つめてほしいということを、具体的にお願いしました。わたしは、このCIOを責めるつもりは毛頭ありませんし、実際、立派なCIOの役割を果たしてきたと思います。

 しかし、M&Aで企業のグローバル化にCIOでありながら、どれほど支援してきたのでしょうか。われわれに相談が無かったから何もしていなかったとは思いませんが、普段の話からはM&Aについては一切出てきませんでした。アウトソーサーが高価だとか、ベンダーが先進的な提案をしてこないとか、デリバリーサイドの相談が多かったように記憶しています。

今後も増えるであろうIT部門の海外移転

 国内の成熟しきった市場を脱出して、ビジネスそのものをグローバル化しようという企業は増加する傾向にあることに異論を唱える方は少ないでしょう。その際に、IT部門を買収先企業に合わせる決断や、買収先企業のCIOをグローバルCIOに任命しようという動きが出てくるのではないかと感じています。グローバル化した際、グローバルのITリソース、情報資源の利活用と管理を管轄するグローバルCIOを買収元の日本企業から選出すべしというのは、いささか話が違う気がします。

 日本国内にもIT組織が残りリージョナルマネージャーとしての役割、役職はあるが、自身がグローバルに対応できなければCIOを続けるのは難しいでしょう。

 読者の皆さまが、このような状況におかれた場合どのように考え行動するでしょうか。

著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクトマネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム (EXP)」の日本の責任者を務める。


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