「NTT DATA Innovation Conference 2012」においてG&S Global Advisorsのフクシマ社長とNTTデータの榎本副社長が「日本企業におけるグローバル人財育成」と題し多様性を受け入れ柔軟に仕事をする人材をいかに育成するかを語った。
講演の冒頭、NTTデータ 代表取締役副社長執行役員の榎本 隆氏から、NTTデータの現状についての説明があった。
2012年3月期(2011年4月1日〜2012年3月31日)の連結売上高は目標であった1兆2000億円を達成する見通し。会社設立以来、23期連続の増収となる。しかし、2008年度をピークに国内の売上高は減少傾向で、これを補っているのが海外事業だ。
「NTTデータグループの本格的な海外進出は2005年の米国Revere社との資本提携がきっかけだった。現在の海外での売上高は2000億円を見込んでおり、2012年度は3000億円を目指している」(榎本氏)
同社の海外子会社は150社を超え、人員は約26000人となっている。グループ全体の従業員は約57000人というから、半数に迫る勢いだ。榎本氏は人事畑が長く、海外子会社のトップも経験していて、グローバル人材に関する知見も深い。その榎本氏は、NTTデータが世界のグローバルITサービス企業の中でグローバルTOP5に入るために掲げた「One NTT DATA」というテーマについて次のように話す。
「エリアを北米、APAC(アジア太平洋)、EMEA(ヨーロッパ、中東およびアフリカ)、中国の4地域に整理して事業活動していくには、グローバルブランドとしてNTT DATAという統一ブランドを使うことが自然だろうということになった。いくつもの現地ブランドをそのまま使っていては、ビジネスも中小企業の集合体の域を出ない格好になってしまう。IBMやAccentureといったライバルと伍していくにはブランド統一は必須だった」(榎本氏)
ただし、人材面での充実は地道な努力が必要になる。榎本氏は各エリアの人材は日本人を含めて、それぞれのエリアでは強いが、グローバルで必ずしも強いとはいえないと話す。それはITソリューションというビジネスそのものの特性から来るものだともいえる。同社の顧客はそれぞれが拠点とするエリアの持つ市場の特性から離れることはできない。日本なら日本に根ざしたマーケット特性、ビジネス慣行があり、ITソリューションがそれらを無視して存在することはできないからだ。
しかし今、それぞれのエリアの顧客は、本来の商圏を脱し、グローバル市場に進出していく。NTTデータのような大手ITソリューション企業にこれから求められるのは、顧客のビジネスや事業課題を理解した上で、グローバルで通用するITサービスを提供することであり、それを実現する人材なのである。
橘・フクシマ・咲江氏は、人材コンサルタントとして有名で、現在は日本企業の人材のグローバル化に関するコンサルティング会社であるG&S Global Advisorsの社長を務めるかたわら、大手日本企業の社外取締役や経済同友会副代表幹事でもある。仕事柄、長年、日本人エグゼクティブの「グローバル人財」としての資質について洞察を続けてきた。フクシマ氏によれば、90年頃から、グローバルには「グローバルなプロフェッショナルの変革者」が求められているのに対して、日本のエグゼクティブは「ドメスティックな管理者的組織人」が多く、需要と供給にミスマッチがあったという。
「長年慣れ親しんだ会社組織というインフラの上であれば力を発揮するが、外資企業に単身乗り込み、ゼロから組織を構成し、経験したことのない課題に取組み、解決策を見いだすのは苦手な人が少なくなかった」(フクシマ氏)
フクシマ氏は長年、「資産として市場価値のある人」として人材を「人財」と表現してきた。氏は、日本企業の育成してきた要件は高度成長の源泉であったが、グローバル化の中ではそれだけでは不十分だと言う。
また、以前はグローバル・リーダーは欧米型だったが、コーン・フェリーとエコノミストの調査では、アジアの成長につれて「グローバル・リーダー」の要件は欧米型とアジア型の“両方の特質を兼ね備えたハイブリッド型になる”という結果が出ている。今後一層アジアが世界の成長を牽引するようになれば、個人より組織の利益を優先し現場の意見を尊重し、人間関係を通じて問題解決をする傾向があるアジア型の良さと、高い戦略性を指向しそれゆえ数字を重視し、なおかつ個人の起業家精神を貴ぶ欧米型の経営者の特質も併せ持つリーダーが必要になる」(フクシマ氏)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授