世界経済の混迷はしばらく続くだろう。資産を増やすより守ることが重要になる。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
まずは現在の世界経済を動かす2つの「本質」について、よく知ってもらいたいと思います。世界経済を不安定にしている2つの本質とは、「不均衡」と「連鎖」です。経済がグローバル化して以降、世界経済における不安定さはこの2つの本質によってもたらされています。
現在の世界経済には、いくつかの大きな不均衡が存在しています。具体的に挙げると先進国と新興国間の不均衡、経常黒字国と経常赤字国の不均衡、世界各国で見られる格差の拡大、マネー経済と実体経済との不均衡などがあります。とりわけ、最後に挙げた「マネー経済と実体経済との不均衡」は、世界経済を不安定にしている最大の要因と言えるでしょう。
「累積した不均衡は、いずれ解消に向かう」というのは、経済に限らず、すべての事柄に当てはまる自然の摂理です。不均衡とは、ものごとがバランスを欠いた状態にあることで、そこには、必ずゆがみやひずみが生じます。したがって、不均衡が積み重なれば、そのゆがみやひずみは拡大し、いつかはその状態を保てなくなる時がやって来ます。そして、突然、ゆがみを解消に向かわせる急激な動きが起こり、結果的に不均衡は解消されることになります。
例えば、米国の住宅バブル崩壊や欧州の債務危機は、経常赤字国と経常黒字国の不均衡が累積した結果起こったと考えることができます。また、リーマンショックや世界金融危機は、実体経済とマネー経済の乖離が広がり過ぎたために、その乖離の解消の過程で起きたと考えることもできるのです。
マネー経済が肥大化する最大の要因となったのが、中国のWTOへの加盟です。2001年にWTOに加盟した中国は、輸出拡大で外貨を稼ぐ戦略を取るようになりました。一方で米国は、中国から安い製品を大量に輸入するようになります。さらには、米国内へ呼び込んだ資金を使って、中国をはじめ新興国の成長性の高いマーケットに投資を行い、そのリターンで収益を上げるようにもなりました。
その過程で、中国は米国への輸出増によって急成長を遂げ、代わりに稼いだお金で米国債を買い支えてきました。同様の関係は、中国だけでなく、他の経常黒字国との間でも成り立ってきました。
つまり、米国の貿易赤字が世界の成長をもたらし、世界の成長が米国の借金を穴埋めするという構図の中で、マネーがうまく循環していたのです。この循環が2002〜2007年まで続く、世界同時好況を作り出していました。しかし、この循環により、世界のマネーの流れが完全に1つにつながってしまいます。それに伴い、マネー経済が世界経済全体に及ぼす影響も、以前と比べてはるかに大きくなってしまいました。
その結果、世界のある国で起こったマネー経済の惨事が、すぐに他の国々に連鎖波及し、被害を拡大していくようになります。マネー経済全体からみればささいな規模の出来事がいつの間にか連鎖拡大し、危機と呼ばれる大きな出来事に発展するようになってしまったのです。
これは、世界経済がマネー経済の影響で連鎖性を強めている結果と言えるでしょう。1990年代までは、世界の経済を動かしていたのはマネー経済ではなく、あくまで実体経済でした。しかし現在では、連鎖性が強い経済の誕生により、マネー経済の動きが世界の実体経済をも大きく動かしてしまう状況となっています。この「連鎖性」が、まさに世界経済が抱える2つ目の本質です。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授