人は人から刺激を受け成長していく。意識的に外部や異業種の人たちと交流してはどうだろうか。学ぶことは多いはずだ。
6回連載でスタートしたこのコラムも今月で第5回、あと1回を残すのみとなりました。今回は「今という時代にヘッドハンターが果たすべき役割とは何か」について話します。
「今という時代」を理解する場合、さまざまな切り口があると思いますが、ここでは「コンピューターとネットワークによって高度に情報化されていく時代」という観点で見ていきましょう。
21世紀に入るとかつてないほどのスピードでさまざまな情報が世界中に氾濫しました。最近ではFacebookやLinkdInそしてTwitterなどのSNSがポピュラーになったおかげで、人と人との緩やかなつながりも世界規模で広がりました。誰でも自分の意見を発信できるようになり、一地域で起こったことがあっという間に世界中に知れ渡り、政権の交代や革命さえも起こすきっかけとなってしまうほど一人一人の力が強くなってきたと言えます。
かつて情報を握っていた人がパワーを持ち、その情報操作で世界を牛耳っていた時代とは、明らかに異なる時代になってきているのではないでしょうか。情報が世界中に行き渡ることによって透明性が高くなり、競争社会から共存し合う社会になり、国という概念も崩れて世界がどんどん一つになってきている気がします。この流れは誰も止めることはできず、最終的には収まるところに収まり、良い方向に向かっていると信じています。
しかしながら、その過渡期である今、この変化に対する抵抗勢力や新旧体制の間で軋轢(あつれき)も生じ、混とんとした世の中になっています。新しい体制に変わるための生みの苦しみともいえるのでしょう。
そういう中で、企業の採用に関しても大きな変化が起こってきています。
世の中に転職情報が溢れ、今までは新卒採用のみで社員の雇用を推進してきた日本企業もグローバル化の影響を受け、世界を相手に勝ち残るためには変わらざるを得ない状況になりました。既存ビジネスにおいても外部からリーダー層を採用して社内外の活性化を図ったり、新規事業を速やかに立ち上げるため、即戦力となる人材を求めて中途採用が増えてきています。
会社に就職するという「就社」の時代から、仕事自体にコミットしてどの企業に転職しても通用するプロフェッショナルが求められる「就職」という方向に世の中の流れも変わってきているようです。また、SNSが普及し、転職したい人は自らどんどん情報を発信し、企業も候補者に直接コンタクトすることで採用にかかるコストを圧縮していこうと考える時代となってきました。
そういう状況で「優秀な人を探し出して引き抜いてくる専門職」であるヘッドハンターは、今どういう役割を果たすべきなのでしょうか? これから2つの観点から見ていきたいと思います。
まずは、候補者という観点で見ていくことにしましょう。
今の時代は、インターネットを中心とした情報の登録や流通、開示が簡単にかつスピーディになるに伴い、個人情報もその取り扱いが問題にされるほどネット上に溢れています。しかし、本当に優秀なリーダー層の情報に関しては、実はまだほとんど公に出てきてはいません。彼等は自分たちの影響力が大きいことを自覚していますので、不用意に情報公開することもしませんし、属している組織の中でも重用され、幹部層あるいは次世代の幹部層として育てられているため、転職を本気で考えることはほとんどありません。
もちろん業界内において有名人と呼ばれる人たちは常に存在しており、その中の一部の名前は知られていますが数は限られており、世の中ではそれほど知名度が高いわけではありません。こういう人たちを探し出し、彼らが最も活躍できる環境に抜擢することこそ、ヘッドハンターとしての醍醐味でもあり、やるべきことだと思っています。
こういう人たちはこちらから積極的に探しに行かない限り、なかなか発掘することはできません。また、見つけ出してコンタクトが取れたとしても、縁とタイミングが合わない限りなかなか会いすることもできません。しかしながら、このような真のリーダーたる人物でないと、世の中を大きく変えていくことはできないでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授