これまで世界には国境や海があり、物理的な制約があった。しかし現在、ビジネス上の活動の多くはITの活用で国や距離を越えて瞬時につながり、新たな価値創造を競い合う時代になっている。
11月1日「経営戦略とビッグデータ」をテーマにエグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム(ELForum)の「第39回 インタラクティブミーティング」を開催。NTTデータ 代表取締役社長である岩本敏男氏が登壇し、「ビッグデータ時代のIT活用 NTTデータが描く未来社会」と題した講演を行った。
「ロンドンオリンピック2012、ロンドン2012パラリンピック」が開催され、大いに盛り上がったが、「ロンドンオリンピックは、前回の北京、前々回のアテネと比べ、観戦スタイルが大きく変化した。まさにソーシャリンピック元年といえるものだった」(岩本氏)
ソーシャリンピックとは、ソーシャルメディアを利用して、離れた場所にいる人と興奮や感動を共有するオリンピックの新しい観戦スタイル。大会期間中のツイッターによる「つぶやき」は、全世界で1億5000万回を超え、北京大会の150倍を記録した。岩本氏は、「これはほんの一例だが、ITを活用して取り扱うデータ量は年々増加している」と話す。
IT専門調査会社であるIDCとストレージベンダーのEMCの調査では、2005年に0.1ZB(ゼタバイト)だったデータ量は、2011年には1.8ZBに増加し、さらに2015年には7.9ZBに増大すると予測されている。この1.8ZBをDVDに書き込むと約3800億枚が必要であり、これを積み重ねると地球と月を6往復する高さになるという。
「データ量が増加している原因として、デジタル化が加速していることが挙げられる。サイエンス誌に掲載された論文では、1980年代にアナログ中心だったデータは、デジタルカメラが登場した2000年前後には、全人類のデータの25%がデジタル化され、2002年には50%が、2007年にはほとんどがデジタル化されたと報告されている」(岩本氏)。
近年のデジタル化により、データ量が加速度的に増加した背景を岩本氏は、「CPU、ストレージ、ネットワークという三大要素技術の飛躍的な技術革新が最大の要因。現在、使用されている一般的なPCに搭載されているCPUは、1969年に人類初の月面着陸を実現したアポロ11号に搭載されていたCPUの5万倍の能力に匹敵する」と話す。
またストレージは3.5インチHDDに4TB(テラバイト)が記憶できる時代が来ており、ネットワークは光伝送容量が100Tbpsを超えている。岩本氏は、「4TBのストレージには、芥川龍之介の全集8巻を6万3000メートル積み上げた分だけ記録でき、100Tbpsのネットワークでは、3時間42分の映画"風と共に去りぬ"を1時間で220万本転送できる」と話している。
CPU、ストレージ、ネットワークの三大要素技術の進化が「ビッグデータ」の発展につながっているが、ビッグデータとは、「データ量」はもちろん、数値やテキストだけでなく、画像や映像などの「データの多様化」や多種大量のデータをリアルタイムに取り扱える「データ取得の高頻度化」の3つの定義が重要になる。
このビッグデータに対し、NTTデータでは、「データ収集」「データ蓄積・処理」「データ分析」という3つのプロセスに着目して取り組んでいる。まずデータ収集では、携帯電話やスマートフォン、POSなどの端末、自動改札などのセンサー、人工衛星などの機器などを通じて情報が収集される。
またデータ蓄積・処理では、CPU、ストレージ、ネットワークの進化により、これまで取り扱うことのできなかったビッグデータを蓄積・処理することが可能になった。さらにデータ分析では、天気を予測したり、株価を予測したりできるほか、利用者の趣味嗜好にあわせた商品をリコメンドすることが、より高精度にできるようになっている。
例えばNTTデータは、ビッグデータの活用事例として、橋梁に設置した多数のセンサーで収集したデータから、傾斜、振動、ひずみなどを算出し、リアルタイムのデータや過去の蓄積データに基づいて橋梁の異常を検知するための橋梁モニタリングシステム「BRIMOS」を国内外にて展開している。
またリクルートのグルメ・クーポン事業である「ホットペッパーグルメ」では、当初は1週間分のログしか分析できなかったが、Hadoopによる大量分散処理を実現したことで、1年分のログ分析が可能になり、クリック率と購入率を1.6倍に拡大した。さらにNTTデータグループ会社の一つ、HALEXでは、気象庁のビッグデータを分析し、特定事業者向けに気象情報を提供している。
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明治学院大学 経済学部准教授