WEBビジネスの歴史を知り、かつ次のステージにおいて先行して事業を伸ばしていくためになにをすべきか?
WEBビジネス戦略にはどのくらい取り組まれているだろうか?
ITメディアエグゼクティブの皆さんには、本業としてWEBに取り組んでいる、WEBを営業、販売チャネルのひとつとして活用している、ホームページを作って会社情報を発信している、まだまだこれからという企業など、利用度としてかなり幅広いと思います。
しかし「もっとWEBを活用して成果を出していきたい」という気持ちは皆さん一緒ではないでしょうか。とはいえ、WEBビジネスに関する情報は玉石混交。どの情報を信じればいいのか、どこから強化していけばいいのか、自分だけでは判断が難しいところでしょう。
この連載では、筆者自身が運営者として実際に経験したネットショップ事業の変遷からWEBビジネスのこれまでを振り返り、これからの戦略に最重要であるデータマーケティングの概念と具体的な着手方法を伝えていきます。全3回の連載を通じて、WEBビジネスの歴史を知り、かつ次のステージにおいて先行して事業を伸ばしていくためのヒントを共有できればと考えています。
さて、第1回のテーマはWEBビジネスの環境の変化についてです。筆者自身が2005年から2011年の前半までネットショップの運営者という立場でしたので、現場の生々しい話から変化の流れを追っていきます。WEBビジネスとひと言でいっても、WEB上の物販であるネットショップの他に、情報を提供するいわゆるWEBサービス、facebookやtwitterに代表されるSNS、いま流行のソーシャルゲームやソーシャルアプリなど、そのカテゴリもさまざまですし、切り分けも非常に難しいものです。ただ、ネットショップというカテゴリをひとつ取ってみても、正にその変化は社会の縮図そのもの。WEBビジネスだけでなく、リアルビジネスにも通じる原理原則が潜んでいます。
わたしがネットショップを運営する企業に入社した2005年は、楽天市場が怒涛の勢いで伸びていた時期でした。前年の2004年から楽天市場の会員が爆発的に増えはじめ、需要(ネットショップ利用者)と供給(ネットショップ出店者)のバランスが大きく動いたのです。
40万円の広告投資で300万の売り上げが返ってくる。その利益を次の広告に投資して、さらに大きな売り上げを得る。当時、需給のバランスが崩れ需要側に大きく傾いたことで、広告投資による収益化が可能になるビジネスモデルが生まれていました。メールアドレスについても同様です。当時はたくさんのアドレスを保有することが売り上げ拡大への近道でした。利益をメールアドレスの取得に投資し、何十万通というアドレスに売れ筋商品のメールマガジンを送ることで、1日で数十万数百万という売り上げが作れた時代でした。
もちろん、ネットショップを出店している全ての会社が儲かっていたわけではありません。大きく売り上げを伸ばしていた会社は経営者も優秀でしたし、スタッフもモチベーションに溢れていました。ただ、当時は今現在よりも売ることが楽だったのは間違いありません。広告投資、メールアドレス投資、商品数を増やす、など戦略が比較的シンプルでしたから。
楽天市場で月商数千万円のネットショップがたくさん生まれたことは、新聞や雑誌、書籍などによってすぐに多くの方に伝わりました。そうなると今度は、楽天市場に出店する店舗の数が増えてきます。需要側に大きく傾いていたバランスが、供給側が増えることで少しずつ均されてきたのが2006年後半のこと。そんな状況の中で、他の販売チャネルの需要と供給のバランスが動き始め、楽天市場と同様の状態が起こり始めていました。
ヤフーショッピングが急激に伸びたのは2007年前半から、DeNAが運営するビッダーズは2008年前半。それと重なるように、2007年後半から独自ドメインサイト、いわゆる自社サイトの立ち上げが増えてきます。ネットショップのSEO対策やリスティング広告の代理店が勢いを増してきたのはこの時期です。
2004年に楽天市場をスタートし、2006年にヤフーショッピングに出店、2007年にビッダーズに目をつけ、同時に自社サイトをコツコツと整備し続けたならば、まあなんと幸せなWEBビジネス人生が送れたことでしょうか。しかし、そんな時代は長くは続きません。そう、これは単なるネットショップバブルだったのです。
上場を目指して監査法人を入れていた会社を知っています。売り上げの伸びを見越してオフィスを都心に移転し、高学歴の学生を高い給与で採用して、赤字に転落した会社も知っています。タイミング悪く在庫を抱え、倒産してしまった会社も知っています。一年前には、優秀ネットショップとして表彰されていた会社が、翌年に倒産なんて……。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授