なでしこサッカー実現のために、最初の1年半はコーチ主導で指導を展開。コーチ主導が4、選手主導が1の割合で、徹底して基本をたたき込んだ。これにより北京オリンピックでベスト4に入ることができた。
次に2011年のワールドカップに向け、コーチ主導が2、選手主導が3の割合で、自主性を育む練習を実施。これにより、試合中に予期せぬ問題が発生しても自分たちで判断し、新しいアイデアを出し合い、チームで対応する体制が確立された。
またポルトガル遠征が終わって帰国した日に東日本大震災があり、空港で帰宅難民になるという経験をした。この震災に伴い、日本代表としての誇りと絆が強まったことから、さらなる団結力と選手の自主性が養われたという。
「女子代表にはプロもいるが、多くはアマチュアのため、業務終了後にナイターで練習している。良い環境とはいえない中でも、大好きなサッカーができる喜びと、サポートしてくれる人たちへの感謝の気持ちを忘れず、多くの人に感動を伝えることを目的にプレーしている。こうした練習により、ワールドカップやロンドンオリンピックの試合前には笑顔で円陣をくめるようになった。チーム全員が意見を出し合い、ビジョンを共有して闘うソーシャル・フットボールが実現した」(佐々木氏)
ソーシャル・フットボール実現の鍵になるのが「なでしこらしい選手になろう」「なでしこらしい選手を育てよう」というキーワードだ。「なでしこらしい」とは、ひたむきで、心が強く、明るく、礼儀正しいこと。ワールドカップでも点を取られては取り返し、最後にPK戦で勝利したひたむきさ。またワールドカップの優勝チームとして初めてフェアプレー賞を受賞した礼儀正しさにつながっている。
相手を「リスペクト」することも重要。佐々木氏は、「米国女子代表は、ワールドカップ前に2試合、オリンピック前にも2試合、仙台で試合をしてくれた。相手をリスペクトすれば、相手もリスペクトしてくれることを学ばなければならない。この考え方は、サッカーだけでなく、会社の中でも同じである」と言う。
これらの原点には「歩々是道場(ほぼこれどうじょう)」という佐々木氏の座右の銘がある。「いつでも、どこでも、常に学ぶことはできる。無駄なことなどないということを父が教えてくれた。特にNTT東日本で3年所属した料金担当の経験は、現在のサッカー人生にも生かされている」と佐々木氏は語る。
指導者に必要とされるスキルは、確認や情熱、誠実さ、忍耐、論理的な分析、適応能力、勇気など数多いが、特に重要となるのはコミュニケーションのスキルである。佐々木氏は、「料金に対する苦情にいかに対応するかを考えることで、指導者として必要なスキルが身についた。当時から指導者になりたいという目標があり、常に目標をずらさずに努力してきた。もちろん家族のサポートも重要で、非常に感謝している」と言う。
佐々木氏は、「日本サッカー協会指導者のS級ライセンスまで取得させてもらったNTT関東には非常に感謝しているので、今回の講演も受けた。なでしこジャパンの営業部長としては、今後2年くらい世界大会がないので、忘れられないようにがんばっていきたい。今後もぜひ応援をお願いします」と講演を締めくくった。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授