自らが先頭に立たないかぎり、外部の変化にコントロールされてしまう。自らの意志を持ち、周りに働きかけ状況を変える意志が必要である。
「寝不足です」
2日間のマネジャー(管理職)向け育成プログラムでのAさんの2日目冒頭の第一声である。1日目夜のプログラム終了後に会社に戻り、2日目朝、会場に戻ってきたAさん。1日不在となったために溜まった仕事を、その日中に対応しなければならず、夜中まで仕事をする。休憩時間は常に電話とメールをし、仕事に追われている。毎日がこの繰り返し。
育成プログラムを提供する中で、このようなマネジャーと会うことは多い。常に何かに追われながら、真面目に必死で仕事をしている。終わることのない忙しさを、労働時間を投資することで、何とか対処している。
2011年の産業能率大学の調査によると、3年前と比較した職場の状況について、過半数(54.2%)の課長(マネジャー)が「業務量が増加している」と答えている。今回は、そのようなマネジャーの実態と、それを打破する方向性について考えてみたい。
内閣府の「平成24年版 高齢社会白書(全体版)」によると、2010年に12860万人だった日本の人口は、2015年には12660万人、2050年には9700万人、2060年に8674万人にまで減少すると予想され、日本の国内市場という観点では縮小していくのは明確である。経営陣から売上拡大という企業の成長を求められたとしても、国内市場が厳しいのは直視しなくてはならない事実である。
その一方で、成長を維持するためには、海外市場に目を向けざるを得ない企業がほとんどであり、海外進出の流れはこれからも止まることは無いだろう。また、海外進出だけでなく、国内においても外国人採用は当たり前になってきており、日本語の話せない外国人が新入社員として入社してきているケースも出ている。社内公用語が英語になった企業が増えていることも、周知の事実である。
グローバル化だけでなく、急速なIT化が進み、それ以外にも、ダイバーシティーマネジメントやワークライフバランス、コンプライアンスなど、マネジャーにのしかかってくるものは非常に多い。市場環境、社内環境が急激に変化する中で、その中心となって推進していくことが求められるマネジャー。このような環境変化において、忙しいのは当然であろう。
経団連が2011年に「ミドルマネジャーの現状課題の把握等に関する調査結果」を発表している。その結果を見ると、経営者が「重要度の高いミドルマネジャーの役割」として求めるものは、「経営環境の変化を踏まえた新しい事業や仕組みを自ら企画立案する」「部下のキャリア・将来を見据えて、必要な指導・育成をする」が1位、2位であった。この2つは「自分自身(回答した経営者)がミドルの頃よりも重要度が高まった」と答えている。外部の変化に目を向け、新たなイノベーションを起こし、部下のキャリアを支援しながら、育成を行ってほしいという要望なのだろう。
その一方で「現状のミドルマネジャーが達成できていないと思うもの」という質問に対しても、先ほどの2つが1位、2位を占めており、経営者が求めていることに対して、マネジャーが応えきれていないという実情が見て取れる。
また、日本生産性本部が2011年に調査した「職場のコミュニケーションに関する意識調査」では、課長の約9割は「部下を理解できている」と答えるが、一般社員の約4割は「上司は私を理解していない」と答えている。同様に、課長の約9割は「部下の話を聴いている」に対して、一般社員の約3割は「上司は私の話をあまり聴かない」と答え、課長の約9割は「部下を褒めている」に対して、一般社員の約半数は「上司は褒めない」と答えている。
やっているつもりのマネジャー、満足していないその部下という構図が浮かび上がっている。非常に忙しい中で、部下のことを意識しているつもりであったとしても、部下から「もっとコミュニケーションをとってほしい」と求められているという結果である。
変化が激しい環境に加えて、マネジャーは、上からも下からもさまざまなことが求められる。それだけ求められれば、忙しいのも当然である。産業能率大学の「上場企業の課長を取り巻く状況に関する調査」によると、課長の99%がプレイヤーを兼務しているという結果が出ている。もはや、マネジメント専任のマネジャーなど、今の世の中、ほとんど存在しない。
では、このような時代において、プレイングマネジャーが意識すべきことは何であろうか。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授