グローバリゼーション3.0――高度な経営のかじ取りが求められる製造業をITで支援ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

「グローバリゼーション3.0、これからが製造変革の正念場」をテーマに「第28回 ITmedia エグゼクティブセミナー」が開催された。IT革新によりグローバル化が加速し、新興国の原動力となっているグローバリゼーション3.0において、製造業の変革はいかにあるべきかが考察された。

» 2013年11月13日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]

 10月18日に開催された「第28回 ITmedia エグゼクティブセミナー」のテーマは、「グローバリゼーション3.0、これからが製造変革の正念場」。情報通信の技術革新により、世界経済はかつてないほど緊密かつ強固に結びついている。グローバル化はビジネスチャンスであり、新興国の成長の原動力となっているが、その一方でリスクも潜んでいる。こうした状況をグローバリゼーション3.0と位置づけ、これからの製造業の変革について考察した。

高度な経営のかじ取りが求められる製造業

 基調講演には、早稲田大学ビジネススクール教授、元マッキンゼー・アンド・カンパニー ディレクター・日本支社長、元カーライル日本共同代表である平野正雄氏が登場。企業経営にアドバイザーとして、インベスターとして、そして現在はアカデミアとしての立場で関わってきた経験を生かしながら「製造業の未来…グローバル革命が製造業を革新する」をテーマに講演した。

早稲田大学ビジネススクール 平野正雄教授

 今日のグローバル化は、どこを起点に考えるべきなのか。大きな起点となったのは、1989年の冷戦構造の崩壊である。その結果、世界の国内総生産(GDP)における貿易額の割合は、1990年代には40%だったものが、2007年には60%になっている。合わせて、金融取引額も90年を起点に大きく拡大した。これにより、これまでローカルに閉じていた経済がグローバル化に向かっていることが理解できる。

 「今日のグローバル化は、政治的要因、制度的要因、技術的要因の3つの革命が複合的に関与する巨大な変化のうねりである。この推進力となっているのは、新興国の台頭(新興国革命)や資本取引の極大化(金融革命)、情報処理コストの極小化(デジタル革命)であり、これはグローバル革命といえるものであり、私たちの経済・社会構造を大きく変えた」(平野氏)

 グローバル市場における日本企業のプレゼンスは、残念ながら1995年以降、大きく後退している。1995年には世界のトップ500社の35%が日本企業であったが、2009年には13%に減少している。この原因を平野氏は、「認識のギャップ、戦略の誤り、構造問題というグローバル化における3つの蹉跌により、日本企業はグローバル革命への対応に出遅れた」と話している。

 こうした背景のもと、製造業を取り巻く経営環境は、複雑に変化している。そのため、需要と供給、イノベーション、政治・規制、リスクへの対応において、高度な経営のかじ取りが求められている。平野氏は、「今後の製造業は、熟練労働者や高度人材の確保、恒常的なコスト削減の推進、品質基準の厳格化、データとITの活用という4つの大きなテーマを追求していかなければならない」と話している。

ハードとソフトで製造業を支援するマイクロソフト

 基調講演に続き登壇したのは、日本マイクロソフト インダストリーソリューション本部 製造ビジネスグループ インダストリーマネージャーの鈴木靖隆氏と同じく日本マイクロソフト OEM Embedded Japanの藤原雄一郎氏。「グローバル市場で勝ち抜くための製造インテリジェントシステム構築技術と活用事例」とともに、クライアント機器向けプラットフォームである「Windows Embedded」を紹介した。

 製造業に変革をせまる社会的要因として、ソーシャルメディアの普及拡大による消費者へのパワーシフトやグローバル化と新興経済圏の台頭などが挙げられる。こうした状況においてマイクロソフトが提供できる価値を鈴木氏は、「製造業には、まだ活用されていない膨大なデータ(ビッグデータ)があり、そのデータをいかにつないでいくかという"つながる体験価値"が重要になる」と言う。

 具体的な取り組みとしては、価値の創造と革新、業績改善、成長戦略の大きく3つ。この課題を解決するための技術が「Microsoft Discrete Industry Reference Architecture(DIRA)」である。鈴木氏は、「DIRAは、役割に応じて直感的に使えるデバイスや分析ツール、コミュニケーション手段の提供で製造業に貢献する。また製造データを活用することで、日本の製造業の強みである"現場力"を活性化させていきたい」と話している。

 またハードウェアで製造業を支援するのが、操作しやすいインタフェース、需要変動に対する柔軟性、そして可用性を特長とするWindows Embeddedである。藤原氏は、「日ごろ使い慣れたWindows環境を製造業向けの専用機器に拡張できるのが最大のメリット。製造ロボットサプライヤーであるKuka Roboticsは、246台のロボットで1日700台を超える車体を製造できるインテリジェントシステムを自動車メーカーに導入した」と話している。

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