自分史という言葉を聞いたことがあるだろうか。年を取ってから本を出版するというイメージがあるが、もっと気軽に自分の生きてきた歴史を何らかの形でまとめればよい。表現方法は、さまざまある。
アイティメディアが開催している「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、一般社団法人自分史活用推進協議会 事務局長である高橋誠氏が登場。セカンドライフを考えるワークショップを実施しながら「自分史」作りについて紹介した。
「まずは自分史の魅力や活用方法について話しをする。次に実際に自分史を作り、ディスカッションをしてほしい。その後、セカンドライフについて考えてみたい」と話す高橋氏。同氏は、インターネットサイトや出版、イベントなどを企画、運営するスマイルメディアという会社の代表を務めている。
「以前よりインターネットの有効活用というものに興味があり、年表創造コミュニティである"Histy"や社会貢献型クイズサイトである"eQuiz"などのサービスを提供するウェブサイトを立ち上げた。そのウェブサイトの中で自分史のコミュニティを運営していたことから、だんだんと自分史仲間が集まりはじめている」(高橋氏)。
「自分史といえば、本を出版するというイメージが強い。しかしそれだけではない」と高橋氏。その魅力をより多くの人に伝えることを目的に、一般社団法人自分史活用推進協議会を2010年に立ち上げた。また2012年に「自分史作成キット」の販売を開始している。
一方、いまなぜセカンドライフを考えることが必要なのか。
「平均寿命が男性は約80歳、女性は約86歳まで延びていて、終身雇用が崩壊した現在、いつリストラされるかも分からないのが現状。年金制度もいつ破綻するか分からず、定年も延長されつつあり、社会や組織も変化をしている。こうした大きな変化の時代が訪れており、働き方を変えることも考えなければならない」(高橋氏)
また、これまでは組織でなければできなかったことも、ITの活用により個人でできるようになった。例えばメディアの世界は、以前はマスメディアが中心であったが、現在はソーシャルメディアにより、双方向のコミュニケーションが可能になっている。これにより、コミュニケーションの方法も、これまでは日本国内だけでよかったが、どんどんグローバル化が加速している。
「ブロガーである"ちきりん"さんが書いた"未来の働き方を考えよう"という書籍の中に、"2つの人生を生きる"ということが提唱されている。最初に社会に出て働くときには、社会も、自分のことも分かっておらず会社の言うとおりに働いていた。40代になると社会や会社がどのように動いているかが分かるようになり、自分が何をしたいのかも見えてくる」(高橋氏)
定年まで働いて、定年後に好きなことをやるのもよいし、40代で仕事を辞めて、しばらく好きなことをしてまた働き始めるのもよい。働き方は人それぞれであり、だからこそセカンドライフが重要になる。セカンドライフを考えるには、自分らしさとは何か、2つの人生を生きることの意味を考えるのも大事になる。
高橋氏は、「スティーブ・ジョブズは、2005年にスタンフォード大学の卒業式で、他人の言葉で行動するのではなく自分のやりたいことを見つけ、心の声に従って自分らしく生きることが必要であるとスピーチしている」という引用により、セカンドライフを考えることの重要性を説いている。
自分史を作るためにはどうすればよいのだろうか。高橋氏は、「自分史は、定年退職した後に、自分の人生を文章にまとめて、それを自主出版で本にするというイメージが強い。そのため、まだそんな歳ではないとか、自費出版のお金がないとか、文章が書けないなどの理由で踏み切れない人も多い」と話す。
「自分史を作るというのは、本を出版するということではなく、自分の生きてきた歴史を何らかの形でまとめればよいのである。表現方法は、さまざまである。例えば年表を作ってもよいし、写真をまとめてアルバムを作ってもよい。自分の歴史を川柳にして本にした人もいる。文章でも、画像でも、動画でも、音声でも、何でもよい」(高橋氏)。
過去、現在、未来はつながって流れており、過去の積み重ねに現在がある。歴史を学ぶ意味は、過去を学ぶことで現在が理解でき、それが未来に役立つ。自分史を作ることで、自分が生きてきた証や経験を自分の子どもや孫に残すことができる。それを本にして国会図書館に登録しておけば、後世の人が何かの参考文献に役立ててくれるかもしれない。
また、昔のことを思い出すことで脳が活性化され、認知症の治療にも役立つという研究結果も報告されている。自分の行動パターンや思考パターンを理解することで、自分自身を理解することもできる。自分自身が分かれば、そこから新たなやりたいことや目標が見つかるのではないだろうか。
「中学受験で失敗して公立中学に入り、当時は挫折感を味わったが、いま振り返ってみると、そのときに失敗したおかげでいまがあると思えるようになった。これにより、未来に向けて失敗を恐れることが少なくなり、リスクを回避することもできる。まだ歳が若いからということも関係ない。若くても経験していることは結構あるものである」(高橋氏)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授