「報・連・相」という古くて新しいテーマは次世代を担う優秀なリーダー予備軍にとっても重要だ。何を今さら「報・連・相」などと思わずに実行してみてほしい。思いがけない効用がある。
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ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
2008年に日本型ダイバーシティ・コミュユケーションの専門家集団であるFeel Worksを創業以来、さまざまな企業の人材育成や組織開発に従事して7年目に入ろうとしている。今春に私は『結果を出す人の「報・連・相」』(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓した。多様な部下を育て生かせる管理職育成や、人が育つ現場づくりのコンサルティングに従事するなかで、「報・連・相」という古くて新しいテーマが、20〜30代の次世代を担う優秀なリーダー予備軍にとても重要だと実感したからだ。何を今さら「報・連・相」なんて、と思う人もいるかもしれないが、優秀な人ほど「報・連・相」を軽視することで仕事に支障をきたし始めていると感じている。
20〜30代の優秀な皆さんは、本当によく勉強していると感じる。40〜50代の終身雇用を信じて会社に滅私奉公してきた世代と比べると、会社との間合いを冷静にとり、積極的に自己啓発に勤しんできた傾向が強い。厳しい経済情勢が長く続き、どうやら会社は一生面倒を見てくれそうにはないので、いざ会社が傾いたときに食っていけるようにするためにも、英語や各種ビジネス理論の習得に余念がない。そのぶんキャリア意識もとても高い。
これらは素晴らしいことではあるが、一方で上の世代とギャップが広がり、いざ何かを始めようとしても阻まれてしまうこともある。その結果、どうせ自身が学んできた新しい知見や提案は古い価値観の人たちには受け入れられないと不満を募らせてしまう。また不勉強に思える上司や経営陣に落胆し、こんな人のもとで冷や飯をいつまで食うのかという被害者意識すら持ちがち。となると、理解のない上への「報・連・相」も時間をかけるだけ無駄だと軽視の傾向は強くなるばかり。そして一層、仕事もキャリアも停滞していく。こうした悪循環からなかなか抜け出せないでいる優秀な人は少なくない。せっかく勉強してきたにもかかわらず、それを生かしきれずに停滞している気の毒な人が増えているのだ。
時代も市場もめまぐるしく変化し続けている。だから、常にアンテナを張り、必要な勉強は続けるべきである。しかし残念ながら、こうした知識や理論武装だけでは自分の望むキャリアに向けたやりたい仕事を実現させることはできない。なぜなら、次世代リーダー層には、まだ人事権や予算権など大きな組織を動かすための力がないからだ。つまり、戦略はあっても実行部隊がいないのと同じ。勉強してきた理論や知識を生かすためには、戦略的に経営層や上司を味方につけ、周囲を巻き込んでいく力も必要となる。それが戦略的な「報・連・相」なのだ。こうした背景から、「報・連・相」コンサルタントでもなんでもない人材育成企業経営者の私が、あえて「報・連・相」のあり方を見直す本を書くに至ったわけだ。
「報・連・相」の基本的な考え方は、組織人としての責務である。部下の仕事の最終責任を負うのは上司や経営者であるため、部下に「報・連・相」を求める権利があり、部下はその要望に応える義務がある、というのが一般論だろう。
しかし、私が考える戦略的な「報・連・相」は、優秀な次世代リーダー層がキャリアビジョンを実現するための権利である。そして上司や経営者にはそれらを受け止める義務があると捉えなおす必要があると考えている。そう捉えたほうが、勉強家である20〜30代は積極的に「報・連・相」の習得と実践に取り組めるという側面もあるが、昨今の上司や経営者は近視眼的な業績向上に必死になるあまり、自分が関心の持てない部下の話にじっくり付き合う余裕を失っているからだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授