人生に「かくあるべき」という正解などないが、サラリーマンの働き方には「正解」がある。自立した働き方、そうなろうと日々努力する。すべてのサラリーマンにそんな生き方を目指してほしい。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
深夜残業、休日出勤、あたりまえ。
辞令ひとつで縁もゆかりもない土地に飛ばされても、文句ひとつ吐かない。
雨が降ろうと槍が降ろうと、滅私奉公の宮仕え。
かつて人々は、そんな会社に飼い馴らされた高度経済成長期の猛烈サラリーマンを、最大の侮辱を込めて「社畜」と呼んだ。しかし、景気低迷が続いた果てに「ずっと雇ってもらえるなら、社畜でもいいや。」と、この言葉で自らを定義して恥じないサラリーマンが増えている。
本当に、それでいいのだろうか。私が思うに、現代における「社畜」とはつまり、自分の思考や感情を放棄して、自分に自信を持てないまま、それでも一生会社に養ってもらおうという甘えた人のことだ。どんな企業にいても雇用が保証されなくなった今、ひとたび会社から見放されれば、彼らは間違いなく悲惨な末期を迎えることになる。もしあなたが経営者で、社内を見渡してそんな社員ばかりが揃っているなら、早晩会社は立ちいかなくなるだろう。
一方、常に自立した働き方をしている人や、そうなろうと日々自分の牙を研ぐのに余念のない人は、たとえ会社勤めであっても、断じて「社畜」などではない。私は、すべてのサラリーマンに、ぜひ後者のような生き方をしてもらいたい。人生に「かくあるべき」という正解などないが、サラリーマンの働き方には「正解」がある。
「社長」というポジションに魅力を感じる人は少ないのかもしれない。ただし、サラリーマンが最短距離で成長するためのただ一つの方法は、社長を目指して働くことだ。新入社員もベテランも「手段として」社長を目指すだけで、働き方は劇的に変わる。なぜなら社長とは、社員の延長線上ではなく、まったく別の地平にいるからだ。社長を狙う道程は、すべての人々が目指す別々のゴールにつながっている。
ここでは、社長を目指すことで得られる具体的な「力」について、私の経験をもとに紹介したい。これらを身につけながら社長が務まるだけのリーダーになって、自分で会社全体の業績を継続的にあげていく存在になれば、「究極の安定」を手に入れることができるだろう。
1.リーダーシップ
リーダーシップで最も重要な要素は「いついかなるときも結果が出せる」ということだ。社長を目指す人が組織のリーダーを任されると、どうしたら組織として最高の結果が出せるかをまず考えるようになる。部分最適でなく、全体最適を優先したジャッジメントを下すようになる。その戦略に従って部下を動かし、試行錯誤を繰り返しながら、実際に結果を出してみせるという経験をできるだけ重ねることで、自ずとリーダーシップは身についてくる。
2.マネジメント力
「マネージ」という言葉本来の意味は、「管理」や「担当」ではなく「なんとかやりきる」ということだ。良いマネジャーになるには、「やりきる力」を鍛えることに尽きる。組織が大きくなれば、部下のすべてを管理することは難しくなるが、組織内で起こることはすべてマネジャーの責任だ。その覚悟がない人間にマネジャーは務まらない。だからマネジャーは、部下にどんどん仕事を任せつつも「確認する」ことを怠らない姿勢が必要になる。このバランスを身につけることで、どこに行っても通用する「マネジメント力」が得られる。
3.問題解決力
問題のない会社はない。問題を一つひとつ明らかにし、解決していくことで会社は成長していく。問題解決とは、絡み合う問題の根を慎重にほぐし、真の原因を突き止め、そこをつぶすことだ。つまり、根本原因を解決する強い意志力が求められる。具体的には、まずひたすら情報を集めて問題の全体像を浮かび上がらせること。充分な情報があるなら、ロジックで詰めていくことで誰が考えても同じ解決策に行き着くはずなのだ。その一連の過程を繰り返し経験することで、あらゆる問題を解決する力が体に染み付いていく。
4.危機管理能力
どんなに用意周到にしていても、想定外のことは必ず起こる。だとすれば、先回りして危険の芽を摘んでおくことが充分な危機管理だとはいえない。予想もしなかった危機に遭遇しても、動じないで冷静に判断し、合理的な行動がとれることが本当の危機管理能力だ。だからこそ、自分が経験していないことや予想できないこと、新しいことにどんどん挑戦し、現場感覚を磨いていくことで、何が起きても対応できる度胸と「頭の強さ」を獲得できる。
5.コミュニケーション力
取引先と交渉するときのみならず、部下を説得するためにもコミュニケーション能力は不可欠だ。いくら崇高な理想や革新的なビジネスプランを思い描いていたとしても、それを伝えることができなければ意味はないし、周囲の信頼も協力も得ることはできない。コミュニケーションの基本は、相手が納得するまで根気強く説明することだ。そして普段からすべてのコミュニケーションでそれを意識して仕事すること。途中で投げ出さない意志を持ち、さまざまな手段を駆使して「伝える努力」を重ねることが、あなたのコミュニケーション力を高める訓練になる。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授