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» 2014年01月30日 08時00分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:サラリーマンはなぜ、「社長」を目指すべきなのか? (2/2)

[吉越浩一郎,ITmedia]
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6.先見性

 これは私自身のトリンプ時代の経験から確信していることだが、「先を行きすぎている」商品は売れない。時代の一歩先を行くのでもやり過ぎで、時代の「半歩先」を行っているものが売れる。一歩と半歩の違いを見極められることこそが先見性であり、この絶妙なさじ加減を感覚知で捉えられるのは、やはり現場に近い人間だけだ。マーケティングや市場調査に頼ろうとすると、どうしても「一歩先」を見てしまいがちになる。現場を離れず泥くさい仕事に励みながら、同時に業界全体を見渡しながら働いていると、繊細な顧客のニーズをつかむ「勘」が備わってくる。

7.判断力

 リーダーの条件に「決断力」が挙がることは多いが、イチかバチかの決断を迫られる状況を作っている時点で、その人はリーダーとしての役割を果たしていない。データや情報を分析して何をすべきか判断し、結果を見てまた次の手を判断する。その最善解を導き出す方法こそが、ロジカルシンキングだ。そうして小さく的確な判断を次々と下していくことで、進むべき道はおのずと見えてくる。そして、より正確な情報を入手し、以前より精度の高い分析結果が得られたなら、一度下した判断を変更することを恐れてはならない。それは、「軸がブレる」こととは違う。より良い判断なら、躊躇してはならない。大きな決断ではなく、ロジカルに導き出した小さな判断を積み重ねてきた人が、結果的に決断力があるように見えてくるのだ。

8.秘書活用力

 社長としてよい仕事ができるか否かは、いかに有効に秘書に働いてもらうかにかかっている。社長を目指す過程では、秘書をつけて働く経験はできないだろうが、つまりは自分のキャパシティを超えた仕事量を抱えたときに、アシスタントにあたる人物にどう働いてもらうかを考えられるかどうかが重要なのだ。そのためにはまず、費用対効果や目的に対する貢献度を軸に、自分が行なうべき仕事とアシスタントに任せる仕事を的確に振り分ける訓練をすることだ。一人でも部下がついたり、小さなプロジェクトのリーダーを務めるだけでも似た経験ができるのだから、積極的にそういうポジションを狙うべきだ。

9.大局観

 社内で誰よりも高い目線で全体を俯瞰的に見て問題解決にあたるのが、社長の仕事である。自社内で起こっていることはもちろん、あらゆる分野を幅広く知り、社会の全体像を把握する意識が求められる。とはいえ、ただ闇雲に勉強を重ねればいいかと言えばそうではない。例えば営業先で専門的な質問をされて答えに窮したら、そのままにせず、会社に戻って製造部の人間に教えを乞う。納期を短縮してほしいという要望があれば、社内の流通部門に行って自らシステムの全貌を理解し、改善策を考える。大局観を醸成させるためには、そうした「もっと知りたい」という好奇心と、小さな学びのタイミングを逃さず動き出すフットワークが不可欠だ。

 ここで紹介した具体的な能力は、あくまで社長を目指すことで得られるものの一部に過ぎない。社長を狙うことは、あなたがビジネスパーソンとして最短距離で成長する術であると同時に、プライベートを充実させるためのキャパシティを広げる最良の方法であること、そしてあなたが本当にやりたいことを見つけるための最も有効な手段であることを付け加えておく。

 仕事を終えた後の人生最良の時期を、私は本当の人生という意味で「本生(ほんなま)」と呼んでいる。仕事もプライベートも味わい尽くし、笑顔でこの世を去る瞬間は、社長を目指す先にあることをここに断言したい。

著者プロフィール:吉越浩一郎(よしこし こういちろう)

1947年千葉県生まれ。ドイツハイデルベルク大学留学後、上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。極東ドイツ農作物振興会、メリタジャパン、メリタカフェを経て1983年にトリンプ・インターナショナル(香港)に入社。1987年にトリンプ・インターナショナル・ジャパンの代表取締役副社長、1992年に同社の代表取締役社長に就任。在任中に19期連続増収増益を達成。2004年に「平成の名経営者100人」(日本経済新聞社)の1人に選出される。著書に『仕事ができる社員、できない社員』(三笠書房)、『「残業ゼロ」の仕事力』(日本能率協会)など多数。


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