現状、海外展開は年に2〜3カ国のペースで店舗を拡大している。例えば2012年度には、マレーシアに2店舗、クエートに1店舗、ドバイに1店舗を出店している。店舗を出店する場合の販促ツールに関しては、中国、タイ、米国、英国など、各国ともほぼ日本と同じものを使用している。
またグローバル在庫のコントロールに関しても、全世界で1つの仕組みを利用している。松井氏は、「いかに最適にグローバル在庫をコントロールできるかが重要。販売・生産・発注計画の精度を向上し、生産や物流、在庫を効率化することで、各国の計画力、営業力の強化を目指している」と話す。
地域によって異なる気候に応じた商品を展開する日程のガイドラインや、仕入予算の作成が必要。また各国の法規制に準拠した商品展開も重要になる。さらに駐在員が抱える問題として、「ジャパンリスク」がある。松井氏は、「海外展開における成否は、誰を派遣するかにかかっている」と話す。
また「OKY("おまえが来てやってみろ"の略語)」という駐在員の不満の解消も問題の1つ。日本の常識が世界では通じない「日本病」の問題もある。こうした問題解決の一環として「MUJIGRAM(販売オペレーションマニュアル)」による店舗運営を実施。13冊1994ページの日本語マニュアルを使うことで、業務の標準化と見える化を実現している。
MUJIGRAMは社員からの改善提案により定期的に改定を実施。現在、日本語版をはじめ、5冊378ページの英語版、7冊461ページの中国語版、4冊164ページの韓国語版のMUJIGRAMが提供されている。
良品計画の人材育成は、業務基準書による育成をベースに、会社最適・育成視点での適材適所に配置を行う「人材委員会」、専門度を上げる仕組みとマインドを全社の知恵で構築する「人材育成委員会」の3段階で実施している。海外展開の成否は人材に因るところが大きいため、年齢にとらわれず若手でも優秀だったら派遣するなどチャレンジを続けている。また3カ月にわたるすべての課長の海外の現場体験や現地での幹部候補生の採用なども行っている。これらの取り組みが功を奏し2013年度に海外売上高400億円、連結売上高構成比20%を達成している。
松井氏は、「グローバル経営を成功させるためには、確かな"ブランド"と明確な"ビジネスモデル"、それを確実に展開するオペレーション力(実行力)が不可欠になる」と話している。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授