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» 2014年02月12日 08時00分 公開

「上司学」から学ぶ、ほとんどのマネジャーができていない、最も大切なこと気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(2/2 ページ)

[聞き手:中土井僚(オーセンティックワークス)、文:牧田真富果,ITmedia]
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たくさんの人から話を聞き、最後の決断は自分で下す

中土井:自信がないことを自分の中できちんと受け入れているからこそ、周りからの意見を聞いて、取り入れることができるんですね。

その点について、経営者になってから何か変化はありましたか。

嶋津:経営者になってから知った言葉で印象に残っているのは、松下幸之助さんの「衆知を結集し、英断を下す」という言葉です。いろいろな人の言うことに耳を傾けて、たくさんの意見をもらい、最後の決断はあなたが自分で考えて下しなさいという意味です。

 経営者でも、自分で考えたことが正しいかどうかなんて分からないのだから、いろいろな人の話を聞いて、その上で自分なりに判断すればいいと考えられるようになりました。部下に聞くことは昔から多かった気がしますが、この言葉を聞いてからは、まわりの経営者仲間にも聞くようになり、もっとたくさんの人の話を聞きたいという思いが強くなりました。

中土井:多くの人に話を聞く中で、経営者としてチャレンジしたことはありますか?

嶋津:社員が30人ほどに増え、教育をする必要が出てきたので、外部の研修を導入したことです。研修のことで悩んでいたときに、たまたま出会った人が社員研修の仕事をしており、試しに受けさせてくれたことがありました。それがとてもよくて、それからは外部の研修を入れるようになりました。全ての学びは現場にあると思っていたけれど、机の上でも学べることがあると気付きました。それからも、いろいろな人にいい研修がないかを聞いて、勧められたものをまずは自分で受けて、いいものだけを採用しています。

自分のキャラクターや立場を考慮し、怒りの感情を上手に相手に伝える

中土井:『怒らない技術』という本を出版していますが、嶋津さんは怒ることはないのですか。

嶋津:私はもともと短気です。でも、怒りの表現と表出のコントロールができているので、怒っていても、周りは怒っていないように感じるそうです。

多くの人が誤解しているのですが、怒りには良いも悪いもありません。怒りの表現や表出の仕方に良い悪いがあり、表出の仕方をコントロールすることが重要です。人間の怒りの8割は自分勝手な自己満足の怒りだと言われています。残りの2割の怒りが表に出すべき怒りで、その出し方をコントロールするのです。

中土井:自己満足の怒りと、表に出すべき怒りの違いはなんでしょうか。

嶋津:怒った後に後悔するかしないかで判断できます。マネジメントの場面でも、子育ての場面でも、怒った後に後悔がなければ、必要な怒りだったと判断していいと思います。目的を見失って、感情を吐き出ししてしまうことが最もやってはいけないことです。

中土井:マネジメントでも、怒りをどう扱っていくのかは大事なテーマだと思います。怒りを抑えた方がいいこともあれば、爆発させた方がいいこともあると思います。怒りを抑えられない人、逆に怒りをうまく表出できない人にアドバイスをお願いします。

嶋津:本田宗一郎さんはスパナを持って、怒鳴り飛ばしていたという話があります。松下幸之助さんにも似たような話があります。彼らにとって、その怒り方は正しいのです。怒る人のキャラクターや立場などの状況によって、怒りの表出の良しし悪しは決まります。本田宗一郎さん、松下幸之助さんの怒り方と同じように私が怒ったとしても、それは私の正しい怒り方ではないでしょう。

 怒りたいときに怒らないことによって、逆にストレスが溜まるんじゃないかと言われたりしますが、結論から言うと、ストレスは溜まりません。ストレスは怒らないことによって溜まるのではなくて、怒りという感情にまかせて、伝えるべきことを伝えられていないために、ストレスが溜まります。ストレスを溜めないためには、自分の怒っている感情をいかに上手に相手に伝えるかが重要です。

本当に、部下のことを理解していますか?

中土井:最後に、マネジメントに携わっている方にメッセージをお願いします。

嶋津:本当に当たり前のことですが、ほとんどのマネジャーができていないことがあります。それは、部下を理解するということです。当たり前に最初にやるべきことなのに、ほとんどの人ができていません。どこに住んでいるのか、何人兄弟なのか、既婚か未婚か、子どもがいるかいないか。マネジメントをするならば、部下についてあらゆることを知っておくべきだと思います。

 例えば、遠くに住み、離婚をしていて、子どもがまだ小さい女性社員がいたとします。帰ってご飯を作らないといけないのに、上司がそのことを分かっていなければ、配慮してあげることができません。能力でも、家庭の環境でも、その人のことを分かっていれば、適切な配置を考えてあげることができるようにもなります。

 「上司学」の講座でも、「部下カルテ」というワークをしています。一番理解している部下について、様々な項目に答えていただくのですが、全然埋まらない人が多いです。部下カルテを書いてみた全員が、こんなに部下のことを理解していないとは思っていなかったと言います。

中土井:部下を理解することからはじめる。それが大事ということですか。

プロフィール

中土井 僚

オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。

社団法人プレゼンシングインスティテュートコミュニティジャパン理事。書籍「U理論」の翻訳者であり、日本での第一人者でもある。「関係性から未来は生まれる」をテーマに、関係性危機を機会として集団内省を促し、組織の進化と事業転換を支援する事業を行っている。アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア株式会社)他2社を通じてビジネスプロセスリエンジニアリング、組織変革、人材開発領域におけるコンサルティング事業に携わり2005年に独立。約10年に渡り3000時間以上のパーソナル・ライフ・コーチ、ワークショップリーダーとしての活動を行うと共に、一部上場企業を中心にU理論をベースにしたエグゼクティブ・コーチング、組織変革実績を持つ。


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