今後のビジネスを考える上で、近未来のITを予見することは不可欠であり、近未来のIT社会を描いた予想図がNTT DATA Technology Foresightである。NTT DATA Technology Foresight 2014では、政治、経済、社会、技術の4つの側面から、世界に大きな変化をもたらす社会動向と技術を分析し、56の課題と218の技術的なキーワードを抽出。9つの将来変化を導出し、最終的に以下の4つの情報社会トレンドに集約している。
(1)個の影響力拡大が社会の変化を促進する
(2)オープンな共創や連携が加速する
(3)価値の源泉は無形資産の活用にシフトする
(4)持続性の確保と変化への迅速な対応が求められる
1つ目のトレンドのキーワードは、個の力の増大、パーソナライゼーション、顧客中心の3つである。個の力の増大の具体例が3次元(3D)プリンタである。例えば、孫が書いた祖父母の絵を3Dプリンタで立体化するサービスがすでに提供されている。
またパーソナライゼーションの具体例は、100種類以上のフレーバーを楽しめるコカ・コーラの自動販売機。個人の嗜好にあったドリンクを提供できる自動販売機である。この自動販売機は、レシピをソーシャルメディアで共有することも可能だ。
岩本氏は、「サービス提供側は、顧客の要望にあわせた商品、サービスを提供することが求められる。個の時代には、めがね型や指輪型、腕輪型など、人間の能力を拡張するウエアラブルデバイスが重要なテクノロジとなる」と話す。
2つ目のトレンドのキーワードは、共創・連携である。例えば、企画から設計、製造、販売までを、SNSコミュニティの不特定多数のメンバーに依頼し、短期間かつ低コストで自動車を製品化する、クラウドソーシングの仕組みを構築した自動車メーカーもある。
岩本氏は、「こうした仕組みは、ビジネスにおいてもかなり現実化している。オープンな共創や連携の加速で重要となるテクノロジは、モバイルセントリックとソーシャルツールである。モバイルとソーシャルの進化により、ユーザー参加型のエコシステムもますます拡大していくことが予測される」と話す。
3つ目のトレンドのキーワードは、知識社会、サービス化である。知識社会の事例にソフトウェアが自動で記事を生成する「ロボット記者」がある。ロボット記者は、記事スタイルやトーンのパラメータを設定しておくことで、必要な情報を自動的に収集し、文章を生成することができる。またサービス化の事例としてカーシェアリングシステムがある。
岩本氏は、「ここで重要視されるテクノロジが人工知能である。2025年には、人間の脳を完全にシミュレーションできる性能が実現できるという予測も発表されている」と言う。
4つ目のトレンドのキーワードは、不確実性の拡大、実世界のデジタル化、持続性である。不確実性の拡大の事例として、交通渋滞を緩和するNTTデータの取り組みがある。GPSデータを利用して、渋滞が発生した場合にどの信号機をコントロールすれば、渋滞を緩和できるかをシミュレーションすることができる。
また実世界のデジタル化の事例としては、離れた場所にある立体映像を別の場所に投影したりする仕組み、さらに持続性の事例では、サイバー攻撃やインフラクライシスなどに対する取り組みの推進などがある。
「重要となるテクノロジがスマートインフラストラクチャと自動化である。例えば物流倉庫内の配置やピッキングをスマート化するために、棚自体が自立的に最適化される仕組みが実現されている」(岩本氏)。
岩本氏は、「New Globalの世界で、New Growthを実現するためには、既存の経営資源とITを組み合わせ、いかに新しい価値を創出するかが重要になる。ITは、これまでできないと思っていたことを実現するためのカギである」と話し講演を終えた。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授