自律的に成長する組織を実現するのはアドバイスより経験に基づいた学習ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

経験学習サイクルを実践するために、組織としてどのような支援が必要か。「アドバイス支援」「ハゲマシ支援」「キヅキ支援」「ストレッチ支援」の4種類の支援で構成される「成長支援組織診断」を活用し可視化してみる。

» 2014年03月10日 11時31分 公開
[山下竜大,ITmedia]

 アイティメディアが開催している「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、シェイクの取締役である上林周平氏が登場。新入社員・若手中堅研修をはじめとする人材育成を目的とした、社員育成のためのプログラムやセミナーなどで培った経験やノウハウを生かし、「100部署以上の調査に学ぶ、自律的に成長する組織に求められるもの」をテーマに講演した。

さとり世代の若手・中堅社員の現状と実態

上林周平氏

 景気が少しずつ戻りつつあるとはいうものの、デフレ社会が続いた中で「ゆとり世代」から「さとり世代」へと世代が移り変わった若者たちの上昇志向は欠如している。さとり世代はまた、情報化社会におけるGoogle(検索)世代でもあることから、すぐに答えを求めたがる傾向にある。

 また少子化社会により、自己中心的に育てられた世代であることから、自己中心の発想でコミュニケーション能力が乏しい。さらにSNS社会のバーチャルな世代であることから相手への配慮や感じる力が低下している傾向にある。これが最近の若手・中堅社員の時代背景といえる。

 別の側面としてシェイクでは、約1000人の若手・中堅社員に「自分の未来は明るいと感じるか?」というアンケートをしたところ、「明るいと感じる」と答えたのは25.4%だったという。「こうした状況をふまえて、組織として若手および中堅社員とどのように関わっていくかが重要になる」と上林氏は語る。

 それでは、上昇志向が欠如している若手・中堅社員の「成長のブレーキ」となっている事象はどのような要因があるのだろうか。シェイクが実施している研修時に実施したアンケートの平均結果は、以下のとおりである。

(1)「いまの自分では、いましていること以上はできない」と思っている(2.74ポイント)

(2)「これぐらいでいいかな」という慣れのような気持ちがある(3.45ポイント)

(3)「いま以上にたいへんなことをしたくない」という気持ちがある(3.30ポイント)

(4)人にお願いすることに遠慮する気持ちや億劫な気持ちがある(3.34ポイント)

(5)「周りの人に頼っても、良いことはないのでは」という気持ちがある(2.95ポイント)

(6)「自分のために周りが動いてくれるはずだ」という勝手な思い込みがある(2.44ポイント)

 各ポイントは、とても当てはまる(5ポイント)、やや当てはまる(4ポイント)、どちらともいえない(3ポイント)、やや当てはまらない(2ポイント)、まったく当てはまらない(1ポイント)の平均値となる。

 もっともポイントが高かったのが、3)「これぐらいでいいかな」という慣れのような気持ちがある(3.45ポイント)というもの。また、4)人にお願いすることに遠慮する気持ちや億劫な気持ちがある(3.34ポイント)もポイントが高かった。上林氏は、「特に他部署との関わりが必要な、入社5〜7年の社員に遠慮の気持ちが高い」と問題を指摘する。

若手・中堅社員をいかに職場で支援するか

 さとり世代の若手・中堅社員は、どのような職場支援をしていけばよいのだろうか。シェイクでは、職場における若手・中堅社員の支援状況を可視化するための考え方として、「経験」「内省」「持論化」「実践」のサイクルで構成される経験に基づく学習モデル「経験学習サイクル」を採用している。

 経験学習サイクルは、営業方法を暗記するような学習方法ではなく、まず経験したことをそのままにせず、自分の中で考えたことや行動を深く顧みて内省する。どうすればうまくいくのかを持論化し、次の機会の実践に生かしていく。この経験学習サイクルを繰り返すことにより、若手・中堅社員が経験から成長することを支援する。

4種類の関係性

 経験学習サイクルを若手・中堅の社員が実践していくために、組織としてどのような支援が必要になるのか。そのためには、「アドバイス支援」「ハゲマシ支援」「キヅキ支援」「ストレッチ支援」の4種類の支援で構成される「成長支援組織診断」を活用することで支援の実態を可視化する。

 アドバイス支援は「技術的支援:成長するための技術的後押しをしているか?」、ハゲマシ支援は「精神的支援:やる気を支えることを行っているか?」、キヅキ支援は「学び・検証:新たな教訓の促しを行っているか?」、ストレッチ支援は「挑戦:新たな経験・目標の付与が行われているか?」を可視化する。

 「多くの企業では、ハゲマシ支援は実施される傾向にあるが、それ以外の支援はあまり実施されていない」と上林氏。4種類の支援の関係性を時系列で見てみると、新人が入社するとまずはアドバイス支援が実施される。新人がある程度経験を積み、アドバイス支援が不要になると「こんなものかな?」という慣れの状態になる。

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