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» 2015年04月22日 08時00分 公開

経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意:未来を見据え、子どもたちに本当に必要な真の教育を提供し続ける学研 (2/2)

[聞き手:井上敬一、文:牧田真富果,ITmedia]
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価値観の多様化の中、子どもの教育にも変化が

宮原社長(左)と聞き手の井上氏(右)

井上 今の親は子どもに何を望んでいるのでしょうか。社会の構造の変化にともない、価値観が変化しているのでしょうか。

宮原 昔の子どもたちは、博士、医者、弁護士、大臣になれと言われて育ったように思います。みんなが目指したいものがそれしかなかったんですよね。私も、小学校の先生から「権威者になれ」と言われていたのを覚えています。しかし、今は価値観が多様化する社会となったため、親が子どもに押し付けることをしなくなりました。本当はもっと子どもの将来について親がもっと意見してもいいのかもしれません。

 その背景には、親子の絆が薄くなっていることもあると思います。そういう関係性だからこそ、押し付けられないし、子どもも押し付けられたら反発します。日本は本当に家族や地域の絆が薄くなりました。そういった社会の中、教育は知育だけではなく、徳育にも力を入れるべきなのです。学研では、道徳の副読本を出版していて、徳育にも力を入れています。知識偏重主義の今の社会は少しおかしいのかもしれません。次回の大学入試改革で是正されることを願っています。

出版からネットとリアルの場へ広がるコンテンツ創造

井上 価値観が多様化する中、新たな価値を提案することが求められていると思います。学研ではどのようなことに取り組んでいますか。

宮原 アップルがiPhoneを通して新しいライフスタイルを提案したことが象徴しているように、ニーズからウォンツへ、そして今は、価値(バリュー)の時代へと変化しています。書籍や雑誌も価値を与える方へ動いていかなければなりません。

 新たな価値をもたらすという点でうまくいっているのは、看護師を目指す人向けの雑誌、『月刊ナーシング』のネットとリアルへの展開です。雑誌をつくるだけではなく、看護師模試や、セミナーを開催したりしています。200床以上の病院には看護師の研修が義務付けられているのですが、その研修のためのeラーニングも提供。雑誌だけにとどまらない新たな接点をつくりだしてきました。そのシステムが、このたびインドネシアで採用されました。ネットとリアルの双方向モデルとしての成功例だといえるでしょう。

0歳から高齢者までの学びの場を目指して

井上 あらゆる年齢層、あらゆる業界の幅広いターゲットへコンテンツを提供していますが、一貫している信条を教えてください。

宮原 私たちが目指しているのは、0歳から高齢者までの学びの場をつくることです。それぞれの年代に合わせた、1から100をつくるのではなく、何もない0から1のコンテンツをつくり、新たな価値を生み出し続けたいと思っています。そして、子ども目線での教材づくりのように、当事者目線はいつも追求しています。

 お客様に迎合するのではなく、常に新たな価値を提供する企業を目指しています。そのためには、紙の教材や本、雑誌をつくるだけの出版社から抜け出さなくてはならなりません。紙、デジタル、どちらがいいのかということではなく、それぞれの利点を生かしたコンテンツづくりを行っている最中です。会社ができてから70年、変わらないポリシーは学研のDNAとして持ちつつ、これからも新たな挑戦を続けます。

対談を終えて

 企業として教育の観点から本当の意味で社会の役に立つ。宮原社長からは、お金を支払ってくれる人を単に喜ばせればいいという経営手法を飛び越えて、真の教育者としての凄味を感じました。利益というものは社会への貢献の結果として受け取るべきもの、自分自身も経営者としての在り方を考えさせられました。また、教育事業として古くから歴史のある企業ながら、常に新しい媒体を生み出し顧客にアプローチする姿も印象的でした。理念を保ちながら時代にマッチしていく姿勢が永続する企業の共通点なのだと感じました。

プロフィール

井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、WEBセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済を牽引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


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