次に小尾氏は、「国際社会における日本の役割、位置づけはどのようになるか」と鈴木氏に問う。鈴木氏は、「これまで日本は、世界の工場であり、日本で作ったものを世界で販売するという構図だった。しかし人件費や地代などの高騰から、製造業を中心にグローバル化が進んでいる。今後は日本の優れた情報インフラを世界に輸出していくことが有効になる。単純に光ファイバーやサーバを売るのではなく、輸出国で情報インフラを構築し、運用、維持して、長期にサポートすることが必要になる」と語る。
また川崎氏は、「便利で使いやすい仕組み、TCO(total cost of ownership / 総所有コスト)が削減できる仕組みなど、仕組みでビジネスをすることが重要。抱えている問題を解決する仕組みを提供することが、海外ビジネスでの成功の鍵になる。そのとき各企業が単独で海外進出するのではなく、産官学のオールジャパン体制で取り組むことが必要になる」と言う。例えば公的資金を使い、初期投資リスクを軽減し、日本の企業が海外に進出しやすくする施策も必要。産官学で投資国の経済発展と、日本の海外ビジネスを拡大に寄与するモデルが必要になる。
それでは今後、産官学でどのような取り組みを展開していかなければならないのか。まず産業界の取り組みについて川崎氏は、「地方創生のためには、人口を増やさなければならない。人口を増やすためには、仕事を創ることが必要であり、ICTの活用が不可欠。まったくの私見だが、これまで1カ所に100人が集合して行っていたコールセンター業務をICTの活用で10カ所に10人ずつ地方に分散することで100人のコールセンター業務を実現したり、ふるさと納税を事業創出に役立てたりという柔軟な発想が必要になる」と語る。
またITコンサルタントという立場から浜口氏は、次のように語る。「ソフトウェア開発で、テレワークの活用を検討している。これまでは、コスト削減を目的に、中国にオフショアをしていた。しかし近年、中国の人件費が高騰したこともあり、日本の地方企業に依頼しても大差がなくなってきた。そこでテレワークを活用し、地方の企業とソフトウェア開発を行っていくことが地方創生の取り組みのひとつになると考えている。さらに企業はもちろん、従業員にも税制上の優遇措置があれば、一気に加速することが期待できる」
都道府県CIOフォーラム前会長でもある桑原氏は、「自治体のICT活用は、税金を使うため、民間ほどビッグバン的な導入ができない。計画的に少しずつしかICTを導入できないのが実情。その一方、自治体ではフェース・ツー・フェイスのサービスも不可欠。将来、どんなに人型ロボットが進化しても、窓口業務のすべてをロボットで対応できるわけではなく、ICT活用と人のサービスのバランスをいかに取るかが、今後の自治体のCIOに求められる。またコンパクトシティーの実現に向けた取り組みも重要になる」と話す。
ディスカッションのまとめとして小尾氏は、「日本の将来、ICTの未来、そして日本再興につながる産官学の取り組みという非常に有益な知見を得ることができた。地球球的課題の超高齢社会ICT利活用対策を日本がフロントランナーとして産官学でリードするのは国家的使命」とディスカッションを締めくくった。
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明治学院大学 経済学部准教授