地方創生と海外展開に不可欠なICT活用――産官学のオールジャパン体制で推進国際CIO学会10周年記念講演会(1/2 ページ)

国際CIO学会創立10周年記念公開講演会「日本経済社会の未来」のセッションでは、「ICT産業の未来と地方創生・国際展開」をテーマにパネルディスカッションが行われた。

» 2015年05月21日 08時00分 公開
[山下竜大ITmedia]

 「ICT産業の未来と地方創生・国際展開」をテーマとしたパネルディスカッションには、パネリストとして、NTTデータシニアアドバイザー/JISA会長/国際CIO学会会長の浜口友一氏、総務省情報通信国際戦略局長の鈴木茂樹氏、沖電気工業代表取締役社長の川崎秀一氏、広島県CIO/都道府県CIOフォーラム前会長の桑原義幸氏の4人が登壇。早稲田大学 教授/国際CIO学会世界会長の小尾敏夫氏をモデレータに、ICT産業の未来がどの方向に向かっていくのか、地方創生と国際展開という2つの視点で議論が展開された。

第4次産業革命につながるICTの未来

写真右から桑原氏、川崎氏、鈴木氏、浜口氏、小尾氏

 まずICT産業の未来について、浜口氏が「IoT」について語る。経産省では、2024年に250億台のデバイスがインターネットにつながるとしているが、ある新聞では2020年に500億台と報道している。浜口氏は、「どちらにせよ今後も台数が増えていくことは間違いない。さまざまな分野にIoTが急速に浸透し、新しいビジネスモデルやプレイヤーが登場するなど、ビジネス全体が大きく変化する。ドイツでは、インダストリー4.0として製造業が産官学の取り組みを推進しているが、日本では産官学の取り組みが遅れている」と語る。

 IoTなどのメガトレンドは、世界中の課題を解決できるソリューションとして期待されている。日本では、少子高齢化や環境問題、異常気象などの課題を、産官学で早期に解決することが求められている。川崎氏は、「IoTなどは、すでに生活に取り入れられている。たとえば回転寿司チェーンでは、入店した顧客の10分後、15分後のふるまいを予測し、提供するネタを変え、廃棄ロスを4分の1にした。IoTにより、業務負荷を軽減し、顧客サービスを向上できる事例だ。ICT活用は人類のためにならなければ意味はない」と話す。

 こうした状況は、第4次産業革命とも呼ばれている。第1次産業革命が蒸気機関、第2次産業革命が電力、第3次産業革命がコンピュータ活用、そして第4次産業革命がサイバーフィジカルシステム(CPS)である。第4次産業革命を総称してIoTということもある。第4次産業革命には、情報通信、製造、ヘルスケア、エネルギー、行政など、あらゆる業界が迅速に取り組むことが必要。そのためには、セキュリティの強化やセンサ技術などのキーテクノロジーの開発、人材育成なども推進していかなければならない。

地方創生と海外展開――成功の鍵はICT活用

 いかに地方創生を実現し、日本経済を再生するか。小尾氏は、「総務省として、ずばり地方創生の鍵は何か?」と問う。鈴木氏は、「地方創生の鍵はICT活用であり、ポイントは2つ。1つは、ICTの活用で生産性の向上を支えること。もう1つは、いつでも、どこでも仕事ができる環境を整えることだ」と語る。たとえば農業では、田畑にセンサを設置し、温度や水分、肥料などの状態を監視して、市場状況を予測しながら出荷することで効率化や生産性向上が期待できる。鈴木氏は、「これまでとは違う地方創生が必要だ」と言う。

 3年前より「おしい!広島県」という観光PRを成功させ、現在「泣ける!広島県」を展開する広島県では、ITを駆使し、クールでスマートな電子行政を実現する「クール&スマート広島」を推進。ほかの自治体やマスコミなど、第三者から評価される「自治体のベストプラクティス」を目指している。桑原氏は、「オフィス中心だったワークスタイルを、人中心に変革。シンクライアント端末やクラウドの活用で、いつでも、どこでも仕事ができる環境を構築した。今後も"おしい!CIO"にならないように努力したい」と笑う。

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