スティーブ・ジョブズと日本企業の事例から紐解く組織の中からイノベーションを起こす方法。
唐突ですが質問です。10年位前の世の中になくて、今ごく普通にあるものを、できるだけ多くあげてみてください。商品・サービス、建物、企業・団体・組織、国家、概念・イデオロギー、アイドルなどなど、なんでも構いません。10分ほど集中して考えると、実に数多くのモノやコトが出てきます。スマホ、東京スカイツリー、水素自動車、ももいろクローバーZ、iPad、クマモン、北陸新幹線……。これらはイノベーションの一例です。
ポイントは3つです。1つ目が、その数の多さです。「10年ほど前に存在していなかった何か」は、とにかく数が多い。このイマジネーションを何人かのグループで行うと、すぐに100個以上になります。
2つ目が、その経済成果の大きさです。経済成果というと堅いですね。乱暴にいうと儲かっているかどうかです。ゆるキャラで一躍有名になった「くまもん」も、10年ほど前には存在していませんでした。その経済効果を日本銀行の熊本支店が試算しています。なんと、2年間で1244億円です。同様に、「ふなっしー」は8000億円ともいわれています。
この10年ほどで生まれた新しいモノやコトは、膨大な経済成果を上げているのです。そして最後がご自身の10年前です。皆さんはいったい何をしていましたか?おそらく、皆さんは何かしらの社会的活動をしていたと思います。ただ、ほとんどの人が、前述したイノベーションには関わっていなかったでしょう。
イノベーションは数が多く、経済成果が膨大であり、必ず誰かが仕掛けている。企業の機能が、顧客・市場を創ること(マーケティング)と、新しい価値を創ること(イノベーション)である限り、イノベーションはどの時代にも必要とされます。それは、さまざまな外的環境の変化が急激に起きている現代には、なおさら求められていることです。
では、イノベーションとはいったい何でしょうか? 私はイノベーションを、「経済成果をもたらす革新」と定義しています。社会の役に立つ新しいことであり、かつ経済成果を伴うものがイノベーションです。非連続なものや連続的・カイゼン的なものもあります。天才的な発明からおきるコトもあれば、日常の小さな工夫も経済成果をもたらします。では、イノベーションを起こすために、われわれはどうしたらいいのでしょうか?
「どうすれば組織の中からイノベーションを起こすことができるのか?」私は日々自問自答しています。1986年にリクルートに入社して30年余りが経ちました。近年はイノベーション創出の研究及び事業開発をしています。リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所での「組織の中でのイノベーション創出研究」を皮切りに、さまざまな機会を通じて、数多くのイノベーターや経営者、経営企画部長、研究開発部長、人事部長と議論してきました。対話した企業数は300社を下りません。
そこで、あることに気づきました。バブル崩壊後失われた20年に、実際に着実にイノベーションを興している日本企業や団体・組織があること。そのイノベーションは、アップルでのスティーブ・ジョブズのような、キラ星のごとく輝くイノベーターが主導したようなものではないこと。
どちらかというと、日本式の地味な組織の中での交流を通じておきたものであること。イノベーターたちは、少し変わり者に見えること。イノベーションを起こす過程で、イノベーション・マネージャとでもいうべき支援者が必ず存在していること。そこには独特の組織や制度などの支援があったこと。経営者も変革に本気で行動したこと……などです。
組織の中からイノベーションを起こす日本式の作法があるのではないか? それは、難しいものではないのではないか? 援用しまねをすることができるのではないか? もしかしたらジョブズが率いるアップルでも、似たようなことを行っていたのではないか? 多くのイノベーションに携わる人たちと話すうちに湧いてきたこのような疑問を、4つのポイントにまとめることができました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授