海外で活躍するためには何が必要か、何を見習うべきなのか。ジャーナリストの嶌信彦氏が、これまでの取材で得た知識や経験を「鳥、虫、歴史の目」を通して話した
NTTデータが1月28日に開催した「NTT DATA Innovation Conference 2016」の基調講演に、ジャーナリストである嶌信彦氏が登場。「鳥 虫 歴史の目を持つ」をテーマに、激変する世界の中で日本人や日本企業はどのように活躍し、成功者の何を見習えばよいのかについて、これまでの取材で得た知識や経験を織り交ぜて講演した。
嶌氏は、「ジャーナリストは、まず虫の目を持てと先輩によく言われた。ただし、虫の目だけでは駄目である。ジャーナリズムの世界では、虫の目を持つとともに、鳥の目を持つことが重要になる」と話す。虫の目とは、虫のように這いつくばって、歩き回って取材をし、データを集めて記事を書くことである。
一方の鳥の目とは、鳥の目を持って全体を俯瞰し、それがどのような意味を持っているのかを理解することを意味する。虫の目と鳥の目の両方を持ち合わせなければ、物事の本質は見えてこない。しかし「もう1つ大事なことがある。」と嶌氏は言う。それは歴史の目を持つことだ。
歴史は何度も繰り返す。そしてそこには、新しいヒントも隠されている。過去の歴史から、未来を学ばなければならない。日本人は先に先に進もうとする民族だが、ときには歴史を見直すことも重要になる。これからの10年は、大変な10年になるが、こういう時こそ歴史の目が重要になる。
これからの10年を考えるとき、1990年からの10年がカギになる。1990年は、社会主義経済が自由主義経済に取り込まれた年である。90年代末の中国は急激に強くなったが、この1〜2年の中国の状況を見ると成長が鈍くなっている。中国の成長が停滞すると、中国との貿易量が多い東南アジアや欧州にも大きな影響を及ぼす。
「1990年代の状況に匹敵するくらい大きな変化がこの1年に起きている。中東情勢である」(嶌氏)。
最近の事件を見ても、ISILにより中東は大混乱になっている。ISILの本当の狙いは明確ではないが、シリアとイラクの国境をなくそうとしているようだ。嶌氏は、「昔の砂漠の民は、国境などなく、自由に歩いていた。それを20世紀初頭に、欧米が石油を得るために勝手に引いたのがいまの国境である。それを元に戻すというのがISILの主張だ」と話す。
中東の混乱は続くことが予想されるが、現状では中東だけの問題ではなく、難民問題が欧州全体に広がっている。すでに100万人、潜在的には700万人といわれる難民が欧州に行き場を求めているが、受け入れの許容量を超えている。日本を含め、世界全体がISIL問題に巻き込まれているが、こうした状況をいつ解決できるか先が見えないのが現実である。
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明治学院大学 経済学部准教授