リーダーの成功は、メンバーを成長させること。他人を成長させるためには、それぞれにあった成長の方法を見つけることが必要。リーダーは部下の成長を妨げる「思考の枠」を広げることが必要になる。
ITmedia エグゼクティブ勉強会に、ビジネスコーチ 常務執行役員 マーケティング部長である青木裕氏が登場。「成功するITマネジャーの"人づきあい術"」をテーマに、人間関係の質を高める方法について、ITエンジニア時代の経験を生かし、ITエンジニア向けの研修や1対1のコーチングに基づいた実践方法を交えて紹介した。
「リーダーの定義は、ほかの人とともに目的達成に向けて進む人である。1人で頑張るのではなく、いかにメンバーや他部門とともに成果を上げるかを考えることが求められる。自分自身も、リーダーになる前の成功とは、自分自身が成長することだったが、リーダーになったあとの成功は、他人を成長させることである」(青木氏)
他人を成長させるためには、自分の成功体験を押し付けるのではなく、それぞれにあった成長の方法を見つけることが必要になる。そのためには、解釈や固定観念、思い込み、他者へのレッテルなどの思考のパターンや癖を捨て去り、部下の成長を妨げている「思考の枠」を広げることが必要になる。
思考の枠を広げるために有効になるのが、(1)対話、(2)よい質問、(3)アドバイス、(4)フィードフォワード/フィードバックの大きく4つの方法である。これが気づきの原点となり、行動の改善につながり、それを定着化させることで思考の枠を広げることができる。
「マサチューセッツ工科大学(MIT)のダニエル・キム教授が提唱している"組織の成功循環モデル"がある。組織の成功循環モデルとは、(1)関係の質、(2)思考の質、(3)行動の質、(4)結果の質のサイクルで構成されるモデルで、このサイクルには、"グッドサイクル"と"バッドサイクル"がある」(青木氏)
グッドサイクルとは、(1)関係の質が高いと、(2)思考の質や(3)行動の質も高くなり、(4)結果の質も高くなり、さらに(1)関係の質が高くなるというサイクル。一方、バッドサイクルとは、(4)結果の質が低いと、(1)関係の質や(2)思考の質、および(3)行動の質が低下し、さらに結果の質が悪くなるサイクルである。
青木氏は、「関係の質が高ければ、必ず良い結果になるわけではないが、長期的に良い結果を求めていくためには、関係の質を強化することが必要である。関係が良くなれば、新しい気づきが生まれ、自発的に行動を改善し、それを定着化させることで、良い成果を得やすくなる」と話している。
周囲と対話し、良い質問をすることで、自分の行動を変革するための良いアイデアをもらう方法がフィードフォワードである。フィードフォワードを実践する方法は、大きく以下の4つである。
(1)あなたにとって重要で変えたいと思う行動を1つ選ぶ
(2)その行動を相手に伝え改善に役立ちそうなアイデアをもらう
(3)提案を注意して聞く
(4)「ありがとうございました」と言う
「リーダーには雑談も重要であり、フィードフォワードも一種の雑談といえる。ちょっとしたことでも、周囲の人に聞いてみると思いがけないアイデアが得られることがある。その日に解決したい問題についてのフィードフォワードを朝礼で実施することで、大きな成果を上げている企業もある」(青木氏)
フィードフォワードでは、こんなことに困っているけど、誰かいい人を知らないか、何かいい技術はないかなど、アイデアを出しあうことで問題を解決する。人同士で行う方法もあれば、ホワイトボードなどに書いておき、アイデアを持っている人が答えるという方法もある。得られたアイデアを実現するための方法がピアコーチングである。
ピアコーチングは、同じ立場や同僚同士で行う行動変革のためのコーチングである。行動変革のためのアイデア実現に向けてルーチンにするが、これを1人で実践していくのは難しい。そこで変えようとしている行動を実現するために、自分自身に問いかける質問リストを作り、定期的にピアコーチに聞いてもらう。
ピアコーチングを実施するポイントは、「承認すること」と「評価にならないようにすること」である。また、「行動変革フォローアップ用シート」を利用するのも有効になる。行動変革フォローアップ用シートは、行動変革のテーマを決め、それに対するチェック項目について「できた」「できない」を毎日記録するためのシートである。
「相手(同僚や家族)の話を最後まで聞いたか、相手の話を聞くときに作業を中断して集中したかなど、行動変革のチェック項目を毎日評価することで習慣化できる。よく会社の言動と家庭の言動は同じといわれる。会社で人の話を聞かない人は、家庭でも話を聞かない。会社での行動を変革することで、家族との関係も良くなる」(青木氏)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授