関係の質を高める方法として、「行動傾向別コミュニケーション」がある。行動傾向別コミュニケーションとは、人それぞれにコミュニケーションの方法が違うので、行動特性を「自己主張レベル」と「感情表現レベル」の2つの軸に分け、「現実派」「社交派」「理論派」「友好派」の4つにタイプでコミュニケーションを変える手法である。
自己主張レベルは、話す速さが速い、話す内容が多い、声が大きいなどの「自己主張型」と話す速さが遅い、話す内容が少ない、声が小さいなどの「非自己主張型」に分類される。一方、感情表現レベルは、表情が生き生きとした「感情表現型」と無表情の「非感情表現型」に分類される。
これにより、自己主張型で非感情表現型の現実派、自己主張型で感情表現型の社交派、非自己主張型で感情表現型の友好派、非自己主張型で非感情表現型の理論派に分類できる。現実派は解決策を早く明確にしたいタイプ、社交派は斬新なアイデアがほしいタイプ、友好派は無理のない解決をしたいタイプ、理論派は完璧に計画を立てたいタイプである。
現実派に有効なコミュニケーションは、単刀直入に要件から切り出すことであり、社交派に有効なのは、興味を示す話題を提供して話をさせること、友好派に有効なのは、うかがいを立ててから話をすること、論理派に有効なのは、すぐに本題に入ることである。
一方、現実派が嫌うのは、世間話や趣味の話など非効率的で優柔不断な話であり、社交派が嫌うのは、繰り返しや複雑な話、自慢を無視されるなど、友好派が嫌うのは、鈍感、短期、急な話の変更、不安を無視されるなど、理論派が嫌うのは、なれなれしく個人的な話題から始まることや論理を否定されることなどである。
「現実派のモチベーションを上げるのは、開拓的な仕事を進めること、社交派のモチベーションを上げるのは、貢献に対する評価を示すこと、友好派のモチベーションを上げるのは、人間関係を深めたいという気持ちに訴えかけること、理論派のモチベーションを上げるのは、正確さと理論性への欲求に訴えることである」(青木氏)
モチベーションの向上において、「承認」は重要なポイントの1つである。承認の目的は、自信を持たせ、自発的な成長を促すこと。承認のスキルには、「行為」と「存在」がある。行為に対する承認は、ほめる、叱る、評価する、表彰するなど。一方、存在に対する承認は、あいさつをする、名前を呼ぶ、変化に気づく、声をかけるなどである。
また承認の言葉には、Youメッセージ(あなたは素晴らしい)、Iメッセージ(私も刺激を受けた)、Weメッセージ(チームのみんなも喜んでいる)がある。リーダーと部下の信頼関係にあわせ、Youメッセージだけでなく、IメッセージやWeメッセージを組み合わせる。さらに承認文化の構築には、メンバーの情報共有を促すPDCAシートが有効になる。
PDCAシートには、ある一定期間を振り返って、(1)うまくいったことは何か、(2)うまくいった原因は何か、(3)うまくいかなかったことは何か、(4)うまくいかなかった原因は何か、(5)次の一手は何かという5つのポイントについて自問自答し、それを紙に記述して発表することでメンバー間の情報共有を促進する。
情報共有のためのPDCAシートを導入する個人的なメリットとしては、自分の行動を振り返ることができること、自分のゴールを明確にできること、常にゴールを意識して仕事に取り組めること、問題発見能力が高まること、「次の一手」を考える習慣が身につくことなどである。
一方、組織的なメリットとしては、メンバーが何を考えて仕事をしているかが明確になること、情報の共有化が進むこと、コミュニケーションが活発になり、職場の雰囲気が良くなること、成功事例、失敗事例の共有により組織力が強化されること、記録を残すことで、半年前、1年前と比べた成長度合いを確認できることなどである。
青木氏は、「行動変革のための方法は、職場で実践し、定着化させることで効果を発揮する。そのためにはフォローアップが重要になる。同僚のフォローアップがない場合、少しある場合、定着化している場合では、リーダーシップの変化に大きな差が出てくるのでぜひ試してみてほしい」と締めくくった。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授