2020年に向け、社会インフラはどのように変化していくのだろうか? 決済、O2O、センサー技術など、国内外のエッジの効いたサービス事例を一挙に紹介。
「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、NTTデータ パブリック&フィナンシャル事業推進部 オープンイノベーション事業創発室 シニアスペシャリスト(第一金融事業本部 カード&ペイメント事業部 ビジネス企画担当 部長兼務)の吉田淳一氏が登場。「ICTの潮流を探る――スマホを利用した国内外のエッジの効いたサービス事例」をテーマとした「吉田劇場」を上映した。
「吉田劇場は、半年〜1年後にビジネスの世界で多くの人が体験するであろう、目から鱗の国内外サービストレンドを"映像"を駆使して紹介する劇場型プレゼンテーションである。街の映画館に迷い込んだような感じを醸し出しながら、決済分野やO2O(Online to Offline)分野などにおける最新事例を紹介する」(吉田氏)
まずはモバイルペイメントの事例を紹介。Squareでは、GPSや地理情報システム(GIS)でお店を見つけ、ソーシャルメディア上の評判などを参考にして、その店の商品が欲しい場合、「オープンタブON」と呼ばれるサービスを利用することで、来店時に名前を告げるだけで、カードや現金での支払いなしに商品を購入できるサービスを展開している。
「オープンタブONというサービスは、いわゆるチェックインのような機能で、お店側で事前に来店客を把握できる利点がある。利用者側は、お店で"いつもの"と言う"あこがれ"の買い物が実現できる。米国ではスターバックスコーヒーなどに、すでに導入されているサービスである」(吉田氏)
またPayPalでは、家族や友人などの個人に送金できるサービスを提供している。例えば父親が娘に80ドルを送金する場合、 Bumpと呼ばれる機能でiPhoneをぶつけ合うだけで送金ができる。娘は送金された80ドルで洋服店に行くが、自分に合うサイズがなかった場合、ネット上で自分に合うサイズを見つけ、PayPalで支払うこともできる。
次にショールーミングの事例を紹介。吉田氏は、「お店で商品を見て、自宅に帰ってインターネットで価格や評価などを比較して購入するショールーミングが増えてきた。現在、米国のスマートフォンユーザーの8割以上がショールーミングを行っており、そのため店舗とロイヤルカスタマーとの関係が途切れてしまったといわれている」と語る。
消費者はリアルとバーチャルで、どれくらいの価格差があればバーチャルに移行してしまうのか。ある調査では、買う、買わないは別として、5ドルの差があればバーチャルに気持ちが移ると報告されている。
O2Oは新しくはないが、最近でも優れた事例が数多く登場している。例えば韓国のE-Martでは、ランチタイムの売上減少が大きな課題となっていた。そこで12時〜13時の間に、太陽光と影で巨大なQRコードを街に作り、そのQRコードを読み込んだ利用者に割引クーポンを送信するサービスを実施した。
「現在、数多くのスマートフォンアプリが登場しているが、1年後に残っているのは5%程度といわれている。価値のあるアプリでなければ生き残れない。E-Martは、価値のあるアプリを提供することで、お店の来店客を増やし、さらに購入者を増やすことに成功した」(吉田氏)
また無印良品では、10体のマネキンに10人の店員がそれぞれコーディネートを行い、インターネット上に公開。無印良品のサイトを見た利用者は、自分の気に入ったコーディネートを各店舗で購入できるサービスを展開した。これにより無印良品のO2O広告は、世界3大広告賞を受賞している。
そしてO2Oの次に、オムニチャネルが登場する。消費者の立場から見ると、Eコマースの世界には、まだまだ不満、不安が残っている。日本では、宅配事業者が1時間刻みのスケジュールで丁寧な配送をしているが、特に女性など自宅に届くのを嫌う利用者もいる。商品の受け取り方法が1つの課題となっている。
セブン&アイでは、オムニチャネルに関して米国を視察し、顧客に近づく努力が重要であると判断して、セブン-イレブンの店頭引き取りを実現。すでに6割の利用者が店頭での受け取りを希望しているという。セブン-イレブンでは、1万7000店舗を究極のオムニチャネルとして、ラストワンマイルを制することを目指しているという。
また、優れたオムニチャネルを展開しているのが東急ハンズだ。東急ハンズのウェブサイトには、日本全国で販売された商品のPOSレジ情報を、売れ筋情報として公開している。ウェブサイトで商品を購入することもできるが、すぐに欲しい場合には、ウェブサイトで取り置きをしておき、最寄りの店舗に引き取りに行くこともできる。
「すべての商品の在庫状況が見えるのが、オムニチャネルとしての東急ハンズのすごいところ。リアルとバーチャルが連携して在庫管理ができるので、どのチャネルからでも注文できるのが究極の強みである」(吉田氏)
「5〜10年前、"お支払いは、現金ですか、カードですか?"というテレビCMがあった。現在では、比較対象が大きく変化している」と吉田氏は語る。例えばローソンで、980円で購入できるSquareのモバイル決済技術「Squareリーダー」を利用することで、誰でもクレジットカードのオーナーになれる。
「これまで米国ではクレジットカードが利用できる店舗が約800万件だったが、Squareリーダーの登場により、約400万件の店舗がクレジットカードを利用できるようになった。PayPalなどを含めると、さらに多くの店舗でクレジットカードが利用できることになる」(吉田氏)
PayPalは、「カフェ ネスカフェ 原宿」で、決済行為なしにお金を支払える顔パス支払のサービスを実施している。吉田氏は、「原宿では、すでに数百件の店舗で顔パスサービスを利用できるようになっているようだ」と話す。
「次に銀行サービスについて考えてみたい。ATMの価格はいくらぐらいかご存じだろうか?」と吉田氏。ATMは当初、1000万円程度していたが、セブン銀行の登場などで台数が増えたため、現在では500〜600万円程度まで下がっている。しかし技術が進化した現在では「トップレスATM」と呼ばれる新たなATMが登場している。
「一般的なATMはタッチパネルで操作するが、ウクライナの銀行が導入したトップレスATMは、タッチパネルがないただの箱で、自分のスマートフォンを操作して取引をする。これまでのATMはWindowsベースだったが、トップレスATMはAndroidベースであり、1台あたり約30万円と低コストで実現できるそうだ」(吉田氏)。
また銀行口座を1円単位で管理している人は多くないが、「GoBank」は、商品を購入したレシートをカメラで撮影することで、収支を管理したり、残高を確認したりすることができる。さらにAI技術を利用して、どこの店で、どのクレジットカードを使えばもっともポイントの還元率が良いかをオススメしてくれるのが「WallaBy」サービスである。
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明治学院大学 経済学部准教授