人と本と旅から考える力を学び、自分のいる場から世界を変えていく ――ライフネット生命保険 出口社長ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

8月28日のITmediaエグゼクティブ勉強会では、ライフネット生命保険の出口氏が登壇、「思考軸」をテーマとした講演を行った。

» 2012年09月25日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 ライフネット生命保険は外交員を持たないネット専業の生命保険会社として2008年に開業、日本では戦後初となる独立系生保会社だ。同社の代表取締役社長を務めるのは、生保業界出身の出口治明氏。出口氏は「還暦のベンチャー社長」として注目される一方、本好きかつ旅行好き、歴史マニアという一面も持つ。今回のエグゼクティブ勉強会での講演も、読書や旅、歴史や地理から経済、そして経営まで、幅広い話題に及んだ。

考える力は人と本と旅から

ライフネット生命保険 出口社長

 少子化・高齢化や財政負担、そして国際競争力の低下など、さまざまな課題を抱えている21世紀の日本。20世紀後半には34年間で年率平均7%という高い経済成長が続き、しかも戦争にも参加していない、世界史に例を見ない夢のような経済環境だったが、その反動が今の日本に現れていると出口氏は言う。

 「夢のような経済環境の中で日本人は考えなくなった。そして20世紀の癖を引きずっている。例えば青田買いさえも止められない。これからは考える若者を育てないといけないのに、いまだに多くの日本企業は若者の青田買いをする」(出口氏)

 大学には国公立でも私学でも莫大な税金が投入されている。その根拠は教育機会の平等を実現するため、また同時に、将来の世代すなわち将来の日本に対する投資という目的もある。ところが、そういった投資をさせておきながら、まさに学ぶべき時期にいる若者を、就職活動という非生産的な活動に追い込むのが青田買いだ。

 「若いうちにこそ多くの事を経験してほしい。昨日と違うこと、人と違うことをしていかないと競争力は上がらない。違うことをするためのアイデアが出てくるのは、経験やインプットの蓄積が不可欠。それを身につける手段としては"人から学ぶ" "本から学ぶ" "旅から学ぶ"この3つ以外にない。だから、会いたい人には会う、読みたい本は読む、行きたいところには旅をする。インプットが多ければ多いほどアウトプットの幅が広がり斬新な発想になる」(出口氏)

 中でも、思考力を高めるためには読書が一番だという。特に「古典」を出口氏は推奨、「韓非子」や、アダム・スミスの「国富論」などを例に挙げ、「古典1冊はビジネス書100冊に匹敵」と説明する。なお、出口氏の推奨する書籍は、いわゆる古典書だけでなく現代の本にも及ぶ。経済を考える上で需要な書籍として、ウォーラーステインの「近代世界システム」、日本経済では日銀の白川総裁が就任前に著した「現代の金融政策」などを挙げた。

 「こういった、きちんと書かれた本を熟読して、どのように考えてこのような結論を出したのかと、書いた人の思考プロセスを辿ることが大いに役立つ。思考プロセスを追体験してこそ、考える力は身につく。逆に言えば、自分の頭で考えない限り、どれだけ読んでも意味がない」

自分の頭で足りない部分はチームのダイバーシティで考える

 人、本、旅で勉強し、自分の頭で考えていくことは重要だ。しかし、個人の能力というのは限られており、どれだけ高い能力を持った人物であろうと社会全体を一人で変えられるものではない。

 「社会は、一人の英雄によって変わるものではない。その場その場で、例えば自分の職場、地域、勉強会など、一人ひとりが自分のいる場で変えていくしかない。どう変えていくかは、勉強して自分の頭で考える。自分で足りない部分はチームで考える。それが、世界を良くする、身の回りを良くするための唯一の方法である。」(出口氏)

 チームで考えるとは、どういうことか。優等生を何人も集めて考える、というわけではない。それでは同じような考え方が並ぶだけ。むしろダイバーシティすなわち多様性が重要となる。特に出口氏は"女性、若者、外国人"の採用がカギとなると言う。20世紀後半の日本の経済成長期と違うことをするためには、その当時の日本で主流ではなかった存在が必要となるからだ。

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