星空に新たな価値を経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(2/2 ページ)

» 2016年08月17日 07時17分 公開
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新妻社長(右)と聞き手の井上氏(左)

井上 星空のライトな楽しみ方、星について少し詳しくなれる企画など、これまでにない星空の新たな楽しみ方を提案してきたんですね。そういった発想はなかなかできるものではないと思います。

新妻 今でこそ、星を好きになってくれる方が増えましたが、イベントに参加し始めた頃は、なんとか星に興味をもってもらいたい、という想いで活動していました。天体望遠鏡で星を見ているお客様の横で、興味をそそるような星の話をしていたんです。そうしてお客様の反応を見ているうちに、ただ興味をもってもらうだけでは足りないんだと気づき、星空の多様な楽しみ方の提案をするようになりました。

 「宙ガール」「スターパーティ」の他に、みんなでキャンプに行って星空を見る「宙キャンプ」、子どもたちに星を好きになってもらうための活動「宙キッズ」も行っています。

「自然科学応援企業」として、星空に触れる機会を増やしていく

井上 なるほど。これまでにない施策によって、星空の価値を高めることが天体望遠鏡の市場を広げることにつながっているんですね。

新妻 天体望遠鏡はあくまでも道具です。私たちがしているのは、星を見るという行動のハードルを下げてもらうことです。まずは、ご自身の目で星を見て、その価値を体験してもらうことを目指しています。さまざまな星空の楽しみ方を提案し、星空の価値を高めることで、天体望遠鏡の価値は上がっていくと考えています。

 私たちのミッションは「自然科学応援企業」です。ただ単に見るのではなく、目を凝らして観察することが自然科学につながります。レンズを使って見ると、新たな発見が必ずあるものです。そのようにして自然科学に触れる機会をできるだけたくさんの人に提供していきたいと考えています。

 ビジョンとしては、「星を見せる会社」になることを宣言しています。星というと、遠い宇宙の話のように感じますが、今私たちが生活している地球も、数多ある星のひとつなのです。自然科学とともに、地球を含めた星は動いて、私たちが生きているんです。そう考えると、身近なものに思えてきませんか。

 自然科学に興味を持ち、星空に触れる機会をどのようにして増やしていくかがこれからの課題です。星空の素晴らしさをたくさんの人に身近に感じてもらいたいですね。

井上 今後、展開していきたい取り組みなどはありますか。

新妻 イベントに興味を持ってくれる方が増えてきたので、次は実際来てくれる方を増やしていきたいですね。イベントの情報をホームページ上にまとめたり、星空が綺麗に見える場所などの情報も提供したいと考えています。星空のおもしろさを伝えるアンバサダーの育成にも力を入れていく予定です。今後は、さらにたくさんの人が星を気軽に楽しめるような環境作りを進めていきます。

対談を終えて

 「望遠鏡はあくまで道具なので」この言葉に、ビクセンの、真に顧客を想う気持ちが現れている。私自身も経営者なので分かるのだが、顧客のニーズに応えようと考えるものの、ついつい自分達が作りたい商品開発になったり、サービスがお仕着せになっていたりする。つまり本当の意味でマーケットインの考え方での経営は難しいものだ。まして国内シェアナンバーワンという状況のなか、自分達の製品は道具であると考えるのは至難の技である。

 道具であるから、顧客の求めるものに常に変化させる。道具であるから自分達のこだわりよりも顧客の幸せを。そして顧客の幸せは星が綺麗に見えることであり、自然科学を通した感動や学びである。

 この立ち位置を貫く姿勢に、一企業の枠を超えた聡明なるビジョンが感じられ敬服しました。また、空の星だけではなく、足元の地球も星なのです。と語る新妻社長の眼差しに、いつまでも無邪気な探究心を持つ、一人の人間を感じ、この感覚が真の顧客目線なのだと感じました。

プロフィール

井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、WEBセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済を牽引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


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