お互いに相手を助けるだろうという自信感と期待感を持ちあう関係が人脈メンバーだ。どうすればそんな仲間ができるのだろうか?
人脈はお互いに一肌脱げる相手との関係のことです。お互いに相手を助けるだろうという自信感と期待感を持ちあう関係の相手が人脈メンバーです。単に名刺を交換したとか、同じパーティーに出席して仲良く飲んだとか、相手の携帯を知っているとかSNSでつながっているとか、その類の関係は人脈とは積極的に言えないと私は思っています。
お互いにというのがポイントで、自分の相手への思いと相手に対する自分の評価という2つの要素が必要になります。実際に一肌脱いでくれるかどうかはその時がこないと分かりません。いくら相手に「何かの時には助けてよね」「もちろんだよ」と言い合ったとしても、実際にどうなるかはその時の事情や環境によりますから、曖昧なものであることは間違いありません。個人の心の持ち方が大きく影響します。しかし、自分は何かあったら助けてくれる人がいると感じて生きていくのと、全く孤立無援だと思い込んで生きていくのでは、人生の「生きやすさ」という点では圧倒的に前者でしょう。
相手が自分のことを助けてくれる、一肌脱いでくれるという自信感はどのように発生するのでしょうか。これには2つの要素が関係します。1つは個人の思考傾向です。もう1つは経験を共にすることからくる相手に対する信頼感です。
まず、個人の思考傾向の影響についておさえておきます。人との付き合いに対してポジティブに考える人と、ネガティブに考える人では人脈についての考え方が違うのです。どちらが良いということではありません。ポジティブな人は自分は人脈があると判断する傾向があるし、ネガティブな人はそうではないということです。思考傾向が他人を人脈メンバーと考えるか否かに影響を与えるのです。
「その人知っているポジティブさん」と呼ばれるような人物が皆さんの周りにいませんか?ある会社に当たりを付けたいと考えている時に、「その会社の○○さんを知っているよ、どこどこで一緒だった。彼はその会社ではエースだから連絡しておくよ」と天使のように現れる人のことです。
ところが、○○さんにつないではくれたものの実際に会ってみると○○さんと紹介者とは聞いていたほど仲が良さそうに思えない。おまけに、職場のエースという感じもしない。そして、案件は振り出しに戻ってしまい一体何だったんだろうということになる。紹介者から聞いていた○○さん像と実際が全く違うのです。
これは、紹介者が他人をポジティブに見過ぎるときの典型的な例です。他人と自分の関係性の評価が高いことが原因です。多くの場合、「その人知っているポジティブさん」は、自分の関係者に対して常にポジティブな判断をします。相手は自分を助けてくれると思い込みやすいのです。そして相手への評価も高い。凄い人、エース、素晴らしい人、などと高く相手を見積もり他人に紹介します。これはこれで悪いことではありません。他人のことを高く評価する(おそらく)性格のよい、(たぶん)愛されて育った人なのでしょう。
しかし、現実はその人の評価と乖離していることは往々にしてあります。自分が相手のことを思うほど、相手は自分を重視していない場合もありえるのです。ですから、この種の人が誰かを紹介するという行動をすると困った事態になることが時々発生します。
一方で、他人との関係性に対してネガティブな人が居ます。彼らは多くの場合、誰を知っているということを公表したがりませんし、他人に自分の人脈メンバーを紹介することに対して消極的です。意地が悪いのではなくて(悪い場合ももちろんあります)、紹介しても上手くいかないと思っているからです。相手は自分を助けないことが前提で自分の行動を組み立てますから、一人で奮闘することが基本行動になります。ある種の機会損失をしているといってもよいでしょう。
繰り返しますがどちらが正しいといか、どちらが人脈作りに適しているということではありません。皆さんが人脈について考えるときに自分は相手をどう見る傾向があるのかということを知っておくことが、正しい判断の時に必要なのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授