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» 2018年11月22日 08時04分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:ビジネスの成功を握るのは、価格戦略だ! (1/2)

マーケティング理論と行動経済学が、価格戦略の武器になる。

[永井孝尚,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。


『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』

 「多くのビジネスパーソンは価格戦略の大切さを知らない」というのは、マーケティングのプロとして「100円のコーラを1000円で売る方法」(シリーズ60万部)、「これいったいどうやったら売れるんですか?」(10万部)などのベストセラーを手掛けてきた永井孝尚さんだ。『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』(PHP新書)を出版した永井さんに、話を聞いた。

価格戦略を知らないビジネスパーソン

 本書を書いた理由は、価格戦略の大切さが、あまりにも知られていないからです。ビジネスの現場で、私はこんな言葉を何回も聞いてきました。

 「売れないなぁ。値下げしようか」

 「もうからないなぁ。値上げするか」

 こんなことをしていたら、長い目で見るとほぼ間違いなく、ますます売れなくなります。「売れないから」と値下げして、一時的に売れても、そのうち売れなくなります。「もうからないから」というだけの理由で値上げしても、お客さんは離れていきます。

 でも「価格戦略」というと何やら難しそうで、多くの人は食わず嫌いなのが現実です。いつも「もったいないなぁ」と思います。というのも価格戦略の考え方は役立ちますし、何よりも面白いからです。

もうかるかどうかは、価格戦略で決まる

 価格戦略はビジネス戦略そのものです。ビジネスでもうかるかどうかは価格戦略次第。これは簡単な式ですぐ分かります。

 利益 = 販売量 × 価格 − コスト

 多くの企業では、「販売量を増やす(=売る)」ことや「コストを下げる(=ムダを削減する)」ことは一生懸命にやっています。しかし現実にはこの式で分かるように、ビジネスでもうかるかどうかは価格戦略次第なのです。

 しかし価格についてちゃんと考えている人は、驚くほど少ないのです。日本の多くのビジネスパーソンは、「よいものを、安く売ろう」と考えてきました。「安売り発想」からなかなか抜け出せていません。ライバルとの販売合戦になると、「少しでもライバルより値引きして勝とう」と考えます。これが大間違いなのです。

 価格戦略の大切さを理解する必要があります。安く売るためには十分に考え抜いた戦略が必要ですし、高い価値がある商品は価値に見合った価格で売ることが必要です。

マーケティング理論と行動経済学が、価格戦略の武器になる

 そして価格戦略を考えるには、お客さんの心の中に入って理解することが必要になります。そこで私たちに用意された強力な武器が「行動経済学」です。

 人間は合理的に行動していないことが実に多いものです。健康に悪いと分かっていながらタバコをやめられなかったり、肥満の敵と分かっていながらつい大きなアイスクリームを食べてしまったりします。

 しかしこれまでの経済学は、「人間は常に合理的に考え行動する」という前提だったので、この「合理的ではない」人間の行動を説明できませんでした。例えば歴史上、人々がバブル経済で異常に高騰した土地や株に熱狂して大金を投じた揚げ句、大損する現象を、従来の経済学では説明できませんでした。

 そこで合理的でない人間の行動を解き明かそうとするのが「行動経済学」です。行動経済学は、2002年に行動経済学者のダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞して、広く知られるようになりました。行動経済学を理解すれば、価格に対するお客さんの行動も理解できるようになります。

 この行動経済学とマーケティング理論を組み合わせることで、現代の価格戦略を考えられるようになるのです。『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』(PHP新書)では、この価格戦略の考え方を、次の全9章で分かりやすく紹介しています。

 □第1章 水道水と同じ味なのに、100円のミネラルウオーターを買う理由(行動経済学と価格戦略)

 ■第1部 値下げしてももうかるカラクリ―よいものを安く売る仕組みをどう作るか

 ■第2章 なぜミシュラン一つ星の香港点心が激安580円なのか(コストリーダーシップ戦略)

 ■第3章 参加費0円。婚活パーティのナゾ(無料のビジネスモデル)

 ■第4章 服は「売る」よりも、月5800円で「貸す」がもうかる(サブスクリプションモデルと現状維持バイアス)

 ■第5章 1000円の値引きより、1000円の下取り(適応型プライシング、保有効果、クーポン)

 ■第6章 商品数を4分の1にしたら、6倍売れたワケ(フレーミング効果)

 □第2部 値上げしても爆売れするカラクリ―お客さんを見極め、高く売る

 ■第7章 大人気・順番待ちの1本25万円生ハムセラー(バリュープロポジションとブルーオーシャン戦略)

 ■第8章 価格を2倍にしたら、バカ売れしたアクセサリー(値ごろ感と価格設定方法

 ■第9章 1ドル値下げのライバルに、1ドル値上げで勝ったスミノフ(顧客ロイヤリティーとブランド)


読みどころをピックアップ

 本書第4章では、最近何かと話題の「サブスクリプションモデル」を紹介しています。最近定額サービスが増えてきました。例えばこんなものがあります。

  • 月額5800円で、コーヒー飲み放題のカフェ
  • 月額1500円で、全店利用し放題になるカラオケチェーン
  • 月額6800円で、ブランドバッグ借り放題のサービス
  • 月額2000円で、自転車借り放題

 他にも、ネットフリックスは、月額800円で映画やドラマが見放題。スポティファイは、月額980円で好きな音楽を聞き放題。ドコモのdマガジンは、月額400円で雑誌200誌以上が読み放題。知らぬ間に定額サービスが私たちの周りに広がっています。

 サブスクリプションモデルとは、この定額サービスのことです。「サブスクリプション」というとなんかすごそうな名前ですが、雑誌などの定期購読のことを、英語で「サブスクリプション(subscription)」といいます。私たちが昔からなじんでいる定期購読の考え方です。

 サブスクリプションモデルが広がった理由の一つは、スマホアプリの普及のおかげで、本人認証作業を確実かつ簡単にできるようになり、サービス開始コストが下がったことです。

 しかしそもそも「〜し放題」で、本当にもうかるのでしょうか?

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