SDGsカード・シミュレーションで社会的課題の認識と解決を体験ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

SDGsは、2030年に向けた持続可能な開発目標で、近年多くの企業や教育機関がSDGsに取り組んでいる。

» 2019年05月20日 07時13分 公開
[山下竜大ITmedia]

あなたは社会をどのようなものにしたいか?

Initiative&Solutions,Inc コンサルタント 渡邉信光氏

 ITmedia エグゼクティブ勉強会に、Initiative&Solutions,Inc コンサルタント 渡邉信光氏が登場。

 「今注目のSDGsとビジネスの関連を“カード・シミュレーション”で体験しながら学ぶ」というテーマに基づき、一般財団法人イマココラボのカードゲーム「2030 SDGs(エスディージーズ)」を使い、社会的課題を認識し、その課題の解決活動をシミュレーションするワークショップを会員向けに行った。

 SDGsは、2015年9月に国連会議で採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。国連加盟193カ国が、2016年〜2030年の15年間で達成する行動計画である。17の大きな目標と、それを達成する具体的な169のターゲット、ターゲットをより具体的にした232のインジケーターの3階層で構成される。

 渡邉氏は、こう話す。「今回のワークショップは、SDGsの目標を1つひとつ理解したり、知識を取得したりするのが目的ではない。なぜ、SDGsが私たちの世界に必要なのか“Why”の部分と、それがあることにより、どのような可能性が生まれるかという“可能性”の部分を、シミュレーション体験を通して理解することが目的である」。

シミュレーションの目的は、SDGsの掲げる「社会的課題」テーマを理解し、解決活動のシミュレーションを通じて「何か」に気付き、その「気付き」を共有することにある。

 SDGsの掲げる「社会的課題」テーマは、ビジネスといかに関係するのか? SDGsとビジネスとの関連は、「ソーシャルイノベーション」「ESG投資」「CSV経営」「コレクティブ・インパクト」と少なくとも4つある。

 「ソーシャルイノベーション」は、社会問題に対する革新的な解決法。既存の解決法より効果的・効率的かつ持続可能であり、創出される価値が社会全体にもたらされる。

 「ESG投資」は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字で、企業の長期的な成長にはESGが示す3つの観点での投資が必要なことを意味する。

 「CSV経営(Creating Shared Value)」は、「共通価値の創造」と訳され、マイケル・ポーター教授がハーバード・ビジネス・レビューで提唱した「社会貢献と企業利益を両立」する概念である。

 「コレクティブ・インパクト」は、行政、企業、NPOなどの立場の異なる組織が、組織の壁を越えてお互いの強みを出しあい、社会的課題の解決を目指すアプローチ。コレクティブ・インパクトで成果を上げるための5つの要素は、共通のアジェンダ、活動の相互補完、活動を支える専任チーム、継続的コミュニケーション、評価システムの共有である

 「 “あなたは社会をどのようなものにしたいか?”と自問自答としてほしい。われわれは”社会人”である。であれば、ぜひこの問いに答えを持って欲しい。そのためには、経営学の勉強だけでは足りず、社会学や哲学の知見が欠かせない。最近の注目される知見としては、ドイツの哲学者であるマルクス・ガブリエルの著書『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ刊)はぜひ読んでもらいたい。社会とは何かを考えるヒントが満載である」(渡邉氏)

SDGsカードで2030年の世界をシミュレーション

 このSDGsカード・シミュレーションでは、まずSDGsが掲げる「社会的課題」テーマを理解する。次に解決活動のシミュレーションを通じて「大切な何か」に気付く。最後に「気付き」を共有する。2030年の世界がどうなっているかをシミュレーションする中で、「大切な何か」に気付くという流れだ。

 ここでいう「世界」とは、この勉強会の会場のことであり、勉強会に集まった参加者が2030年の世界を作り上げていく。

 このとき「時間」と「お金」を使い、「経済」「環境」「社会」の3つの観点に留意しながら、「社会課題」の解決に向けて、チームにより「プロジェクト」を実行し、「目標」の達成を目指す。

 渡邉氏は、こう話す。「チームとして何を目指すゴールにするか、“目的(何を目指すのか)”と“価値観(何を大事にするか)”を決定する。これは、現実の世界のゴールである目的と価値観と同じである」

ゲームで使用するお金、時間、意思、プロジェクト、ゴールなど

 目指すゴールは、「大いなる富」「悠々自適」「貧困撲滅」「環境保護」「人間賛歌」の5つ。例えば、「大いなる富」という価値観では、ゲーム終了時に目標以上の「富」を有していることが目的となる。また「悠々自適」は、ゲーム終了時に目標の以上の「時間」を有していることが目的となる。

 シミュレーションの進め方は、お金と時間を使い、プロジェクト活動を行うことで、最終的なゴールを目指す。プロジェクト活動を行うことで、お金をはじめ、いろいろなものを得ることができる。例えば、「交通インフラの整備」のプロジェクトでは、500G(※Gはゲームでの貨幣単位)を投資して完成させれば、1000Gもうかるプロジェクトである。

また、交通インフラの整備で、時間が短縮されれば時間がもらえる。さらに、新たなプロジェクトも得ることができる。

 目指すゴールによっては、「意思」カードが必要になる。「意思」カードは、プロジェクトによって得られる「無形の価値」で、「やりがい」「想い」「経験」を表す。

 「世界の状況メーター」は、シミュレーションの世界の状況を表す。各チームの活動が「世界」にインパクトを与え、「経済」「環境」「社会」のメーターが刻々と変化する。世界の状況メーターの数値により、実行できないプロジェクトもあるので注意が必要になる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆