渡邉氏は話す。「人の移動や物流の高速化で“経済”が活性化したが、公害や排ガスの発生で“環境”でマイナスになるなど、指標のアンバランスが発生する。世界の状況メーターが、どのような水準になったらベストなのか、どういう世界の状況が理想なのかなどを意識しながらプロジェクトを進めることが必要になる」。
あるグローバルICT企業では、管理職候補者への面接で、
(1)どのような社会を実現したいか
(2)現実の社会の課題をどのように認識しているか
(3)なぜそのような課題が起きるのか
(4)その課題をどうすべきか
(5)そのために何をどうするかといった質問がされるという。
「社会人は、その名前のごとく、社会をどうしていきたいかを、最低限考えておかなければならない。そのためには、哲学や社会学などの領域も勉強しておきたい。社会学は、約200年の歴史しかない学問だが、この200年で社会がどのように定義づけられてきたのかが理解できる。これら知見を参考に、今後、世界や日本がどのように進んでいくべきかを同時並行で考えていく習慣が大切だ」(渡邉氏)
ただし、企業活動は、ボランティアではないので、収益を上げることも必要。経済的価値と社会的価値を同時に実現することが重要になる。「現実の世界では、”お金が無くなったから、社会的価値を実現・継続することができませんでした”では済まない」と渡邉氏は言う。そこで、「CSV経営」というキーワードが重要になる。
渡邉氏は言う。「インドの医療機関に、このCSV経営を実践しているアラヴィンド眼科病院がある。貧困層の治療費を無償にしているにもかかわらず、政府からの支援などなしに、収益を上げている。その理由は、ネットで検索してほしいが、これこそCSV経営の好事例である。ハーバード・ビジネススクールのケースにもなっている」
B2B、B2Cのビジネスにおいて、社会的課題を抱えている顧客に対し、どこまでのスコープを持つべきかが重要である。
自社のビジネスが、
こうした観点から、SDGsの17の目標は、経済的価値と社会的価値を同時に実現するための構想を始める時の「問題意識の喚起」材料となる。
プロセスは以下のようになる。
(1)社会的課題の領域としてのSDGsの中で、われわれ自身が問題意識を高め、助けたいクライアントを明確にする。
(2)助けたいクライアントを明確にした上で、創造的問題解決プロセスとしての「デザイン思考」を展開していくことが重要になる。
「視聴者参加型のテレビ番組である“探偵!ナイトスクープ”は、実はSDGsの観点でデザイン思考を展開している事例として優れている。困っているクライアントに寄り添い、話を聞いて、あらゆるネットワークを駆使して、問題を解決する。問題解決の観点で、現場に行くことが必要。世の中の社会的課題の現実を見に行くこと、つまり、三現主義が重要になる」(渡邉氏)。
渡邉氏は、ワークショップの中で、以下の書籍も推薦していた。
イノベーション論の権威(グル)のクリステンセン教授の著書「イノベーションのDNA」(翔泳社刊)では、イノベーションを展開するためのスキルとして、(1)現状に異議を唱えること、(2)リスクをとりつつ、質問力、観察力、ネットワーク力、実験力を生かして、これらを関連づける思考で成果を上げるということを示している。イノベーション実践の基本書である。
その他の推薦図書として、
渡邉氏は、「“未来を自分で作ること。これが未来を予測するもっとも簡単な方法である”というアラン・ケイの言葉がある。未来は、自分たちで切り開いてほしい」とワークショップを締めくくった。
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明治学院大学 経済学部准教授