人は見た目で相手の第一印象を判断する。汚い格好の人に声をかけられると不機嫌になり、きれいな格好の人なら丁寧に対応する。ビジネスの成否は見た目に大きく左右される。
ITmedia エグゼクティブ勉強会に、国際イメージコンサルタントである一色由美子氏が登場。「リーダーとしての存在感、信頼感をアップさせるイメージマネジメント術」をテーマに、米国ニューヨークで、会社経営者や投資家、政治家、アーティストなどの顧客にコンサルティングを行った経験に基づくイメージアップの方法を紹介した。
イメージコンサルタントという職業は、外見はもちろん、話し方や聞き方、立ち振る舞いなど、ノンバーバル(非言語)コミュニケーション全般の改善を最大の目的としている。
「イメージコンサルタントの仕事を説明すると、多くの日本企業のエグゼクティブは"白いシャツを着ればいいのだろう"という反応をする。確かに清潔感は必要だが、それは一部である。内面が重要なのはもちろんだが、外見は内面の一番外側とも言え、内面を見てもらう前に、外見で判断されてしまうことも多い」(一色氏)
具体的な仕事は、「ABCを変えること」。ABCとは、「A(見た目:Appearance)」「B(立ち振る舞い:Behavior)」「C(コミュニケーション:communication)」である。ABCの中でも、短期間で取り組むことができるのが「A(見た目:Appearance)」である。
「『人は見た目が9割』という書籍があるが、私自身は見た目が100%だと思っている。有名企業の社長には、非常に魅力的な人が数多くいるのは、内面と外見の両方を磨き現在の地位にあるのだと感じている。外見が整えば、その後の立ち振る舞いはおのずとついてくる」(一色氏)
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」という事実に基づく映画がある。家を飛び出した16歳の少年が、医者やパイロット、弁護士などになりすまし、23歳で逮捕されるまで詐欺を繰り返す話である。この少年が23歳まで逮捕されなかったのは、頭が良かったのはもちろんだが、医者やパイロットという見た目に人がだまされたからである。
「ハロウィンは子どもの祭りなのに、日本では多くの大人が夢中になるほどコスプレが好き。ビジネスでももっと、自身を演出することを楽しめばいいのにと感じている」(一色氏)
見た目が他者に与える心理的影響は、まず「外見」を判断することで「対人認知」を行い、認知した情報に基づいて「対人行動」に移る。例えば、汚い格好で人に道を尋ねると、高い確率で嫌な顔をされてしまう。同じ格好でお店に入ると、お店の人の対応がどうなるかは容易に想像できる。逆に、洗練された格好でお店に入ると、対応がよくなる。
人は、外見で中身を勝手に判断されてしまう。日本人は同じ会社に長く勤めることが多く、一人一人能力が違うのに外見が画一的で個性を発揮できない、対人認知の部分がおざなりになってしまう傾向にある。依頼が多いのは、外資系企業以外では、個人事業主や講師などで、理由は、対人認知がビジネスに大きく影響するからだ。
「イメージコンサルティングで、さまざまな会社に行くが、メーカーはメーカーの、金融機関には金融機関の顔がある。人のイメージは、社内で重要なのはもちろんだが、社外ではさらに厳しく評価される。日ごろから、どんな人がいい役職に就き、給料が高いかを観察することで、対人認知の能力が磨かれる」(一色氏)
外見を判断し、対人認知の後は、対人行動に移る。対人行動では、この人を支援したいか、攻撃したいかに分かれる。対人認知で相手に説得力があると感じてもらえれば、話を聞く態度になるが、なければ適当に話を流す。これは、仕方のない心理的効果である。
ポッカコーヒーの代名詞ともいえる「顔缶」がある。1972年に発売した当初は、顔缶ではなく、ゴーゴーを踊っている人々のイラストがデザインされていたが、これはまったく売れなかった。当時、缶コーヒーを購入するのは、ほぼ男性であり、1日やる気になる男らしい顔にすることで、37年間で87億本を販売する爆発的なヒット商品に変化した。
その間に10回、時代の変化に合わせて変更している。また、各時代の代表的な漫画のキャラクターなどもデザインに採用されている。ポッカコーヒーと同様に、人も時代にあわせて変化しなければ、時代に取り残されてしまう。役職や立場によって、見た目も変えていく必要がある。
米国では、見た目の違いにより生涯賃金に4000万円の差が出るという調査結果が報告されている。また、犯罪者も見た目が良ければ刑が軽くなるという判例もある。さらに歯がきれいだと育ちが良いと思われ、汚いと育ちが悪いと判断される。チャンスをつかむのは見た目からである。
見た目は有望なのに、ことごとくオーディションに落選する若い女優がいた。彼女は、今どきのおしゃれをしていたが、審査員が評価する見た目ではなかった。合格するためには、審査員に評価されるように変えることも重要。その一環としてイメージコンサルティングでよく実施している「ビジネス ファッションルール テスト」を紹介した。これは、10個の問いに「Yes」か「No」かで答えるものだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授