【新連載】あなたは部下の目に「信頼できるエグゼクティブ」として映っているか？：部下から信頼されるエグゼクティブとは（2/2 ページ）

[朝倉千恵子，ITmedia]

　私は率直に「はい。直した方がいいです。部下が恥ずかしい思いをします」と答えました。経営トップであれば、会食や接待などで社外の人と食事をする機会も多いはず。とはいえ、面と向かって「社長、箸の持ち方が違いますよ」なんて指摘をされることもないでしょう。ただただ同席している部下が恥ずかしい思いをしているはずです。もちろん、部下から「箸の持ち方を直してください」なんて言いにくいですし、まず言われません。

　率直に聞いてくれたからこそ、私も率直に答えることができました。無礼とも捉えられかねない私の答えを聞き、その社長はハッとした表情をし、そして真摯に受け止めてくれました。それからその場でお箸の持ち方をレクチャーしました。

　その後その社長と再会した際に、「朝倉先生！あれから毎日箸の持ち方を練習して、上手になりました！見てください！」と報告があり、見事にマスターした箸使いを見せてくれました。

　いくつになっても学ぶ心さえあれば学ぶ機会があるものです。

　知ったかぶりをしていないか？　分かったふりをしていなか？　隣にいる人に恥ずかしい思いをさせていないか？　謙虚に、素直に、自らを振り返り学ぶ心を持つことこそ品格を手に入れる近道といえるのではないでしょうか。

リーダーの本気は、社内のオーラとなって表れる

　オーラとは、その人や物が発する微妙な雰囲気、あるいは内側から醸し出されるエネルギーといった意味で使われています。目に見えない、言葉にもしづらいことから、ビジネスの話をする際には敬遠されがちな言葉でもあります。

　とはいえ、オーラをまとっている人というのはやっぱりいます。その人が入ってくるだけで場の空気がピリッと変わる。その人の周りにメラメラと燃える炎が見える（気がする）。そんな経験をしたことがある人も少なくないでしょう。

　ここまで、「姿勢」や「立ち居振る舞い」を正すことで存在感を強めること、また幼いころからのしつけや後付けの学習を通して得る品格の話をしてきましたが、内側から醸し出されるエネルギーだけは、あなた自身が本気にならないことにはどうしようもありません。

　経営者として、あるいは管理職・リーダーとして部下育成に本気で取り組む。その内に秘めたエネルギーが極限まで高められて初めて、周囲の人にも感じられるくらいのオーラとなってにじみ出てくるのです。リーダーの徹底したこだわり、本気度は部下のやる気に火をつけ、エネルギーが波及していくことで、社内の雰囲気すらガラリと変えてしまいます。

　私はこれまで数千もの企業を訪問してきましたが、扉を開けて一歩足を踏み入れた瞬間にその組織のリーダーの本気度が分かります。全ては社内の澄んだ空気と、社員の活気に表れます。またその一端は、観葉植物にも表れます。植物は正直です。観葉植物の手入れで、人の管理と細かいところまでの気配りまで見えてきてしまうのです。

大事なことは全部面倒くさい

　繰り返しになりますが、部下は上司をとても良くみています。上っ面だけを整えた外見演出など部下にはすぐに見破られてしまいます。今回伝えたことは、とても単純で、当たり前と思えることばかりですが、本質的です。あまりにも当たり前すぎて重要性を感じられない、あるいはプライドや面倒くさいという気持ちから本気で取り組むことが難しい、ということもあります。いや、難しいとさえ自覚できないこともあります。

　最後にそんなときに思い出してほしい言葉を贈ります。

「大事なことは全部面倒くさい」―

　今日伝えしたことを実践する中で、「うわ、やっぱり面倒くさいな」と感じることがあったらチャンスだと思ってください。それこそ今のあなたに必要なもののはずです。

著者プロフィール：朝倉千恵子（新規開拓 代表取締役社長）

小学校教員を経て、一般企業の営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。

04年株式会社新規開拓を設立。現在までに延べ17万人の社員研修・人材教育に携わる。

女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、TSL「トップセールスレディ育成塾」を主宰。卒業生は2500人を超える。

著書は全39冊、累計売上部数は約48万部。主な著書に、『コミュニケーションの教科書』（フォレスト出版）、『すごい仕事力』（致知出版社）ほか多数。最新著は『仕事も人生もうまくいっている女性の考え方』（あさ出版）。