社員には自律的に働いてもらいたいし、そのような人材の出現を経営者は熱望している。
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ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
6年前、「起業家のように企業で働く」人たちを紹介し、そのような働き方を世に問うた。
企業で働くということは、結局会社や上司の指示通りに働き、その苦痛の対価として給与をもらうことだ。
もし、あなたがそのように考えているとしたら、それはもうかなり昔の昭和の匂いがする発想だ。いまやどんなに官僚的な組織でも、オーナー系であっても、はたまた官庁であっても、必ず一定数は起業家のように働いている人達がいるのだ。
その人達は、自律主体的に動き、組織を利用して自分のやりたい仕事をやっている。かつては、そのような人材は組織にとって、異分子であり、取り扱いに困る厄介者であった。しかし、いまや、社員には自律的に働いてもらいたいし、そのような人材の出現を経営者は熱望している。なぜなら、彼らこそがイノベーションを起こしてくれ、リーダーとなるからである。
企業の採用、大学生の就職において、この6年の変化は劇的だ。
文系学生では、最も敬遠したい業界の第1位に「メガバンク・信託銀行」、2位の「外食」を挟んで、3位が「地方銀行・信用金庫」、4位が「医療・福祉」と並んで、「外資系金融」、と「生命保険・損害保険」だ(HR総研「2019年卒学生 就職活動動向調査」より)。これらいわゆる金融機関は、かつて一流大学を卒業したエリートをもっとも多く採用してきた人気業界だ。
そして、東大院卒のIT系を専攻した人材の就職先第1位は、スタートアップだ(日本経済新聞2019年8月19日朝刊)。また、募集数が少ないので人気企業ランクには出ないが、優秀な学生にとっての隠れた人気業界は、外資系戦略コンサルティングファームで、できれば、その後起業するというのが彼らのキャリアビジョンだ。これは、普段から多くの学生と話していても実感している。
これだけ、大きな変化があるにもかかわらず、それでも大半の学生は。志望業界は変われども、やはり大企業、ブランド企業を指向している。それは、さまざまな就職人気ランキングを見れば一目瞭然だ。
また、スタートアップ、ベンチャーはやはり一部の「意識高い系」の学生が目指すもので、フツーに働きたい学生にとってはハードルが高い。親にもそのようなえたいのしれないところに行くのは反対されるし、それを説得してまで押し切るほどの覚悟もエネルギーも持ち合わせていない。結果、安心される名の通った企業に落ち着く。自らが起業するなどというのは考えてもみない人がほとんどだ。
しかし、会社に入れば会社がなんとかしてくれる訳ではもはやない。企業は、それを学生、新入社員にぜひちゃんと教えてほしい。
一方で、日本企業は欧米企業やアジアの起業とも異なる足かせがある。これは、右肩上がり安定成長の時代においては非常に有効に機能したものだ。
新卒一括採用だ。
採用時期は今後各社自由に行うようになるが、まっさらな新卒を大企業が採用し、育てあげ、そして彼らを使ってビジネスを行っていく、という点においては当分変わらない。日本(と韓国の一部)以外は、このビジネスを行うのに必要な人材を採ってくる、というEOD(Employee on Demand)で動いており、これがグローバル・スタンダードだ。環境、テクノロジーが激変する時代に、どちらがイノベーションや次のビジネスの柱が生まれやすいかは明らかだろう。
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明治学院大学 経済学部准教授