だからこそ、最初に述べたように、経営者は、社員には自律的に働いてもらい、自分で課題設定・仮説構築をしてくれることを熱望しているのだ。
会社に雇われている、使われている、と思って働くのではなく、会社のブランド、金、人、その他リソースを利用して自分のやりたいことができる、と考えて動いている人たちがいる。彼らは、やらされ感なく自分のやりたいことをやっていると感じられる。いままでとは風景が違って見える。そういう社員の比率が高い会社はおのずと活性化され、結果業績もよくなる。
本の中では多くの人の例を紹介しているが、ここでは一人今回の「令和版」で新たに追加した人を紹介しよう。
この本を読んで自分の潜在能力を開花させた人で、ニトリの富井伸行さんだ。富井さんと出合ったのは今から4年前で、東京都ワーク・ライフ・バランスフェスタで私の基調講演を聞きに来てくれ、終了後に名刺交換をした。その際、本を読んで、自分がやってきたこと、考えていたことを全て表現している本だ、自分のバイブルだと思ったという話をしてくれた。とてもうれしかったのでそのことをよく覚えていた。
富井さんは、新卒でニトリに入社した後、仲間と中国で起業し、その後ニトリに再入社した出戻り組だ。それからはFacebookで友達になってつながっていたが、特にやりとりはなかった。2年後に連絡があり、「もうそろそろお会いしてもいい頃だと思ったので連絡をしました。ぜひランチをして話がしたい」ということだった。何がもういい頃なのか? 分からなかったが、喜んでランチの約束をした。
そして、ランチをしながら次のような話をしてくれた。
同時に、大きなクロッキー帳のようなものにマインドマップのように本の主旨をまとめたもの見せてくれた。これを毎日持ち歩いて、自分の行動と照らし合わせているのだそうだ。
その中心に大きく記されていたのは、起業家のように、ではなく、「起業家として企業で働く」だった。自分にはその方がしっくりくるから、勝手に変えさせてもらいました、ということだった。
それから2年たった。
「令和版」では、ぜひ富井さんのことを書かせてもらいたいと伝えたところ快諾してくれ、出来上がった本を送ったところ、以下のような近況が返ってきた。
そして、この6月に執行役員に昇進した。
いかがだろうか。同じようなことはニトリでなくても、富井さんでなくても、やろうとすればできるのではないだろうか? 私の本が素晴らしいという押し売りをしたいのではない。どのような本でも、話でも構わない、自分が「これだ!」と思ったら、それを信じて、迷わず実践し、振り返り、また実践する。
自分の会社で起こっていることを自分事と捉え、自律的に行動する人は、最強だということをお伝えしたいのだ。
合同会社THS経営組織研究所 代表社員 慶應義塾大学大学院理工学研究科 訪問教授
早稲田大学法学部卒業後、日本電気株式会社(NEC)入社。自費でマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ユニデン株式会社人事総務部長、アップル人事総務本部長兼米アップル社人事担当ディレクターを経て39歳で独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授などを経て、合同会社THS経営組織研究所を設立。元立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科客員教授、慶應義塾大学大学院理工学研究科特任教授。
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ・福岡銀行、エスペック株式会社など複数社の企業の社外取締役。また長年、スタートアップの支援を行っている。
独立以来21年間、会社を設立したり大学で教えていたりしているが、基本的には個人事業主=フリーランスで働いている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授